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陶芸家 五月女 寛 さん

No.408 2010年11月号

陶芸

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 五月女さんのご自宅兼工房はかつての東京の街並みを残す雑司が谷にある。下宿屋だった古い家を三年がかりでご自分で改装されたという。一、二階を吹抜けにして、白い杉板を張り、明るくて清々しい室内に変身させた。「最後に作ったのは、黒い格子の垣根です。風通しがとてもよくなりました」。その通り、気持ちのいい風が室内を通っていく。

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 垣根の内側の棚には盆栽が並んでいる。「作品としてはほとんど出さないんです」と言われるが、様々な形をした植木鉢は、どれも味がある。
 出して頂いたカップやお皿などはもちろん、それをのせた小さな卓も、古い木材の表面に陶板をはめ込んだ自作のもの。奥様とお嬢さん二人も手芸作品などの創作活動をされているという。作ることが当たり前の生活の一部になっているご家族なのだ。

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「十代の頃から古いものが大好きで、よく骨董屋さんや古道具屋さんを見て回っていました」
 古い素材を利用して、色々なものを作る五月女さんの作品は、やはりどこかなつかしい温かみがある。

 土は信楽が一番気に入っていて、主に四種類を使い分けている。ろくろは使わず、手びねりで形を作り削っていくやり方だ。
「木も金属も好きですが、今は土をこねるのが面白くて。発想を自由に形にできるのがいいですね」

 五月女さんを陶芸家という範疇に閉じこめてしまってはいけないのかもしれない。今後、彼の気負いのない自然な発想から生まれてくる作品たちが楽しみである。

R0010213.jpg小さな家のオブジェは人気のシリーズ。素朴な家の形に見る人のイメージがひろがる

五月女寛さんの略歴
1969年 千葉県柏市生まれ
1993年 日本大学理工学部建築学科大学院修了
1999年 作陶開始
2005年 豊島区雑司が谷の自宅に工房を構える。この頃より、ギャラリー、クラフトフェア等で作品を発表


 ◆問合せ先
http://cocolog-nifty.com/(アトリエ空心)