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京都は古くて新しい街。変わっていないようで、常に変わり続けている。
古いものがあたりまえのようにあり、新しいものがつぎつぎにできている。
そんな京都の魅力にはまった人たちを、同じく京男になったデザイナー上野昌人さんがレポート。

京都迷店案内その四 宮崎古美術店 (南区竹田街道九条西側)

2018-08-20

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宮崎古美術店
〒601-8003 京都府京都市南区東九条西山王町1
TEL.075-661-0259
10:00~18:00
不定休につき要連絡

 私にとって京都に住む中での一番の愉しみは街歩きである。初めて歩く道に出遭うと何か面白いものは無いかと、ついキョロキョロしてしまうのだ。近所に住んでいる方に怪訝そうに見られるので、いつか職質されるかもしれないと思ってはいるのだが、味のある壁とか町家の断面とかに出くわすと辺りのことは全く気にならなくなるのは困ったものだ。私の自宅は三十三間堂の側にあるので、七条を川端通から鴨川に出て川沿いに歩くと出町柳の三角洲まで気がつくと歩いてしまったり、今熊野商店街も近いので買い物ついでに東福寺や泉涌寺に歩いて行くことも出来る。たまにTVのロケとかに出くわすと、ちょっと得した気になるのだから我ながらおめでたいと想う。

 もちろん仕事柄、ギャラリーや古美術店のウインドウも観ならがら歩いたりもするのだが、和菓子屋さんの店先には驚くような絵や書がしつらえてあったり、筆や硯などのいわゆる文房具を売る店には、応挙や若冲の墨絵や墨蹟などもあっけないくらい普通に架かっていて驚かされることもしばしばだ。床の間の消滅とともに南画などの軸ものも今の暮らしからは消えつつあるが、京都ではまだまだ暮らしの中で美術は生きている。

 ある日、蛸薬師を烏丸通から東へ歩いていた時に、拓本と表装の展覧会をしていた。ある表具師の方の展覧会であったが、その方のことも良く知らず、ぶらりと入って生意気なことを申し上げたにも拘らず気持ちよく応対してくださった。それがご縁で、以来よく展覧会のご案内を頂いていたが、ある日「面白いお店をやってる若い女の人がいるから、京都にこられたら行ってみませんか」とお誘い頂いた。それが宮崎古美術店の長女、宮崎公子さんと初めて出会うきっかけであった。

 京都で古美術・骨董街といえば祇園の北側にある古門前通と新門前通、それを繋ぐ鴨東の縄手通、比較的若い古美術商が集まる寺町通などが有名であるが、京都駅の南に古美術のお店があるとは意外であった。まだ京都に引っ越す前であったから5~6年前のことだったと想うが、ご自宅兼お店の二軒北にある古いビルの3階に宮崎公子さんのお店はあった。若い女性といえば伊万里やガラスなどを扱うことが多いのだが、公子さんの好みはむしろもっと古い土ものが中心であった。良く云えばシブい、悪く云えばジジむさいとでも表現したくなるような品揃えであったのだ。因に今、このスペースは弟の宮崎良哉さんが友人と台所用品を扱うLADERというお店をやっている。あの若い女性と好みのシブい骨董品のアンバランスさは一体何なのかその時は良く分からなかったが、久しぶりに宮崎古美術店を訪ねてその謎は解けた。お父さんの影響だったのだ。

 公子さんのお父さんの宮崎元治さんは元々は、織物の意匠、つまりデザインの仕事をされていた。ご本人曰く、その仕事には飽きてしまい、好きであった古美術を仕事にしようと想いたったのが約20年くらい前。古美術の仕事をするならまずは中国美術からだろうと勉強をしながら商いをする、それがどんなに大変なことであったかは古美術好きなら想像に難くない。お店の奥に案内して頂くと、その時々に合わせた展示スペースがある。以前伺った時には仏像の展示だったが、今回は唐津と織部を中心に焼きものが飾られていた。以前にも御深井の向付で気になったものがあったが、今回も弥七田の無地の組皿や蕨文様の吸坂手の皿など私の好みのものや、織部や唐津の向付や酒器などが所狭しと並んでいるのだ。壁には禅画や朝鮮通信使の書が飾ってあったり、久しぶりに古美術店というより骨董屋にきたなぁと感じた。宝探しのようでワクワクするのである。

 公子さんはそんな好みのお父さんと一緒に交換会や仕入れにゆく。当然、商いの仕方や好みが似るのも道理であろう。4人姉弟の中で今のところ店を継ぐのは公子さんであるらしい。元治さんからバトンタッチして、お店を切り盛りする日も近いのかも知れない。

 高橋治の『短夜』という骨董屋の女主人公が登場する本がある。加藤唐九郎と思しき陶芸家との交流や九州の陶芸家との恋、ライバルの女骨董商との交換会でのさやあて話など、骨董好きには堪らない小説である。それだけ古美術商というのはドラマになる要素があるのだが、女性にとっては大変厳しい仕事でもある。そのモデルの古美術商の方を私は存じ上げているが、公子さんも紆余曲折を経てそんな女主人になる日がくるのだろうか。私のささやかな愉しみでもある。
(上野昌人)