onlineロゴ2.jpg

骨董・古美術・工芸のポータルサイトmenomeonline

よみものロゴ.jpg

皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)




tanaka15-09-01.jpg




tanaka15-09-03.jpg







(30)蒲の穂 溝萩(禊萩) 吾亦紅




皆さんはガマをご存じですか。「えっ、あのガマ蛙? そういえば、最近ガマを見ないなぁ」、となると、ちょっと脱線しよう。
 福岡あたりでは、ガマ蛙をワクドという。ところが、昔の生粋な博多っ子は「ド」を「ロ」と発音したのである。
「かろのうろんやのいしろうろうのしたのわくろ」。
 お分かりかしら。答えは末尾に。現在は「ド」を「ロ」と言う博多っ子は、一人も居ない。
 本題に戻る。ガマは蒲、植物である。浅い水中に生えて、人の背丈に近い高さに育つ。秋口に穂をつける。これが花に活けられるのだ。左の写真をご覧ください。
 都市近郊では、湿地は埋め立てて宅地に変わる。だから、蒲にはお目にかかれないのだ。最近では、ぼくは由布院の金鱗湖に自生しているのを見ただけだ。が、出雲神話の因幡の素兎で大怪我をした素兎を大国主命が治した妙薬は、蒲の穂の花粉だから、昔はいくらでもあったのであろう。
 初秋に咲く花は、茎の最上部に雄花、その下に雌花がつく。雄花は黄色い花粉をたっぷり雌花に吸い取られると、枯れてしまう。かくて雌花は蒲の穂になり、花好きに寵愛されるのだ。常に雄はみじめな役割を負わされるわけである。ホモ・サピエンスにおいても、また然り。
tanaka15-09-02.jpg 蒲の穂は、溝萩(みそはぎ)、吾亦紅(われもこう)と一緒に山の花好きから頂いた。半世紀も昔のことだが、九重高原の山下湖畔をぐるりと囲って咲き乱れる溝萩を見た感動は、今も忘れない。先年行ってみたら、付近の溝に若干残るだけだった。
 器は縄文の典型だ。口辺の高さが23cmほどなので、使いよい。満身創痍だが、ぼくは愛用してやまないのである。(福岡市在住)
答え:角のうどん屋の石灯籠の下のワクド

note:今回用いた蒲の穂は10cm程度だが、ふつう花屋で売っている蒲の穂は、左下の写真のように15cm以上ある。今回のは姫蒲と言われている種類だとおもう。