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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)




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(31)ノダケ (野竹)




今回はノダケをご紹介する。野竹と書いて「ノダケ」と読むのだが、ぼくとその仲間たちは「ノタケ」と濁らずに発音する習慣である。これが、とんでもない笑い話を生んだのだ。
 ぼくが里山行きの装束でバス停に立っていると、近所の山の花好きのおばさんが、「今頃何がありますか?」、「さてな、ノタケはあるでしょう」と、ぼく。「うちにも少し分けて下さらない」。お安いご用と引き受けた。
 夕方、花が沢山ついたのを持っていくと、「あれっ、ノダケじゃないの。ノタケと聞いたから、キノコだとばかり思っていたのに・・・」。なるほど、椎茸、松茸にノタケか。一本取られた。
 竹は、タケともダケとも発音する。竹筒に青竹。清音に濁音なら、岳だって同じ。槍ケ岳と穂高岳。川も、荒川に隅田川。こんな例は幾らもある。国文学者なら、何か法則をご存じかもしれないが、どうせ後からついた法則である。
 脱線が長くなった。ノダケに戻ろう。ノダケはセリ科の植物だ。林道の路傍にいくらでもある。全く珍しくない。ただ、セリ科の花は一般的に白なのに、ノダケは紫褐色と異色である。
 初めは無愛想な花だとバカにしていたが。つきあうほどに、この剽軽(ひょうきん)な面白さに、捨てがたい味が見えてきた。

tanaka15-10-02.jpg 花芽が滑稽な姿である。左下の写真をご覧下さい。この中から花が現れる仕組みになっているのだ。左上の写真でも、茎から手が伸びて拳を振り上げているように見えるが、この拳が花芽である。
 器は漢の焼締壺。見どころは、もとより、この自然釉の流れである。それで、買ってはみたものの、花生には使いにくい。花が負け気味になるのだ。その点、ノダケは強いから、使ってみることにした。(福岡市在住)