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皆さま この器ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)


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(24)火貰い 兼 手焙り


 昨今「一億総活躍」という言葉をよく聞く。
 ぼくが、一億総○○というスローガンに出遭うこと、これで三度目である。初回は70年前、沖縄戦の頃だった。本土決戦に備えて、「一億総玉砕」と軍部は叫ぶ。武器は竹槍一本。狂気の沙汰だ。
 次は終戦直後の宮様内閣。「一億総懺悔」。ぼくは怒り狂った。何を抜かす。子供の頃から「勝までは欲しがりません」と戒められ、アメ玉一つ買えず、長じれば学徒動員で学業を放棄させ、学友は南海に、大陸に散った。ぼくらに懺悔するべきことはない。お前たち指導層こそ懺悔するべきである。以来、ぼくは、一億総○○という言い方に不信感を持つ。
 ところで、終戦の頃、みな火種に困っていた。マッチは全く配給がない。仕方がないから、寝る前に種火になる小さな木炭を、火鉢の灰の中に埋めておく。翌朝の火種である。木炭は貴重品だから、ケチってより小さいのを使うと、翌朝は燃え尽きていることがある。さあ大変だ。
 こういうときこそ、日頃の近所付き合いが肝心だ。隣近所互いに火種など融通するから、火貰いの出番とあい成るわけである。賢明な皆さんは、左の写真を見ると、使い方の説明は不要かもしれない。火貰いの中に灰を入れておくだけで用が足りるのだ。
 実は、この器、独り用の手焙りにもなる。小さな木炭で結構暖まるし、爺さんがキセルで煙草を吸うには最適である。左の写真の器は、火貰いより手焙りに向いている。
 下に手持ちの3個を並べてみた。真ん中のは四国の高松で、左右は鹿児島で求めた。花器としては右のが一番向いている。(福岡市在住)
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