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野辺の民藝

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)






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刷毛目:陶器の胎土に美しい土がないとき、
白色の化粧土を刷毛につけて胎土に塗ると、
白土に刷毛の紋様がつき、一種の装飾となる。
これを刷毛目と呼んでいる。

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(12)花の名 さまざま



 時おり「名もない路傍の花」といった表現に出遭うが、とんでもない。どんな雑草でも、ちゃんと名前を持っている。その名もさまざまである。
 ウグイスカグラ、ホトトギスなんてきくと、森林浴にでも出かけたい気分になってくる。一方、ひどい名前もあるのだ。
 ママコノシリヌグイ。可愛い花だが、素手では採れない。目に見えないほど、小さい棘だらけなのだ。今一つ、晩夏に白いラッパの奥が紫の小花をいっぱいつけた蔓草がある。匂いをかぐと参ってしまう。名づけてヘクソカヅラ。
 春先に淡紅色の小花をつけるイヌノフグリ。フグリって何だい? この質問に応じておくと、編集さんから、目の眼の品格を貶めると、没にされる。どうしてもという方は、辞典を見て下さい。
 イヌが出たから、ネコも加えよう。そろそろ咲き始めるネコヤナギ。これなら品格を落とさない。以下、漢字で猫柳と書くことにする。
 猫柳はありふれた木である。福岡近郊の小川のほとりに数本あった。冬に赤褐色の芽を出す。何本も採ってバケツの水に浸しておくと、やがてバケツの中には根が生えてくる。上では赤芽が裂けて、純白に輝く毛毬のような花が生まれ出る。白い子猫のミニチュアさながらだ。猫柳と名付けた所以である。
 ぼくは間もなく92歳になる。もう猫柳採りに郊外の小川になんか行けやしない。花好きの知人から戴いた猫柳でご勘弁願いたい。
 器は李朝の刷毛目徳利を使ってみた。小瑕はあるが、口造りはいいし、高さ18センチほど、お預け徳利に頃合いだ。悪い奴が、あの老人め、地獄じゃ釜の蓋開けて待ってるぞ。早く御陀仏しないかな、とこの徳利を狙っている。(福岡市在住)


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この猫柳、白花の下の赤芽が裂け始め、
中の白花が少しみえてきた。一日経つと
花穂がひらくかも。