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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)

tanakahange02b.jpg花:半夏生 器:新羅(高さ約19cm)








(4)半夏生(はんげしょう)

 花穂の脇の葉が半分白く化粧しているので、「はんげしょう」と呼ぶ、というのは俗説だ。
 半夏生とは、『礼記(らいき)』にいわく、七十二候の一つで、夏至から11日目に当たる日という。ちょうどその頃咲くから、この名がついたのである。
 どうだい、ぼくは学があるだろう、と自慢したいが、所詮ぼくには『四書五経』など説く能力はない。単なる文献の受け売りだ。でも、夏が来れば思い出す花である。
 梅雨明けに、大分県九重高原を歩くと、あちこちで半夏生に出遭えて、心に涼風が吹き渡る思いが味わえる。だから、知人に根分けしてもらって、吾が家の庭にも植えてみた。これが、どんどん殖えて辟易している。元気旺盛な奴なのだ。
 根締めは靫草(うつぼぐさ)。以前は、どこの山でも日当たりがいい草地に幾らでも生えていた。要するに路傍の雑草にすぎないのだ。ところが、最近滅多に見なくなってしまった。草苅り機にやられたのである。こういう文明の利器は、山野草好きにとっては、親の仇以上に憎い凶悪犯なのだ。
tanakahange01b.jpg 器は新羅。別段見どころのない凡器である。が、肩には僅かに黄色い自然釉が残り、耳の姿も剽軽(ひょうきん)だ。花に向く。使い込むうちに土臭も消えた。だから、お茶の水指に、と薦めてみるが、カミサンは見向きもしない。ぼくには凡器の嘆きがききとれるのである。
(福岡市在住)