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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)


田中さん11-11B.jpg 花:鵯上戸 器:木器








(7)鵯上戸(ひよどりじょうご)


 山では去年ドングリが豊作だった。あげく、子熊が殖えて、今年は里に出没する熊が少なくない。安全保障上問題である。でも、やっぱり稔りは農耕民族には嬉しいことだ。今月の花は実ものを活けよう。慶事である。赤い実の鵯上戸(ひよどりじょうご)がもってこいだろう。
 写真でご覧のとおり、鵯上戸は蔓性植物だ。夏に白い花をつけるというが、見たことがない。目立たない花にちがいない。ところが、秋に実が熟してくると、俄然色気づいて、艶々と光輝くのである。食べてみたくなるのだが、有毒だそうだ。皆様も艶なものにはうかつに喰いつかない方がいい。痛い目に遭いますぞ。「禁断」という木の実もある。ご用心、ご用心。
 さて、器。山仕事に使う鉈入れに似た木器を使ってみた。この器、厚味がないから鉈は収まらない。ぼくは包丁入れだと思っている。山仕事に何で包丁…。この疑問は、同好の士の著作をひもどいたら解けた。
 古窯趾に近い川の淀みは陶片拾いの穴場だと書いてある。その昔、川は生活の場であり、また、焼き損じ陶の捨て場でもあったのだ。美濃の山中なんて、うまく当たれば、志野、黄瀬戸や瀬戸黒など陶片がざくざく出る川があるそうだ。
田中さん11-11.jpg ついでに川で魚を捕って、その場で刺身にして桃山の陶片に盛ると、下界では味わえない珍味になる。酒は青竹を割って入れておくと、竹の精を吸って爽やかな風味が出るという。山菜も採るだろう。包丁は必需品である。
 この包丁入れは東京で買った。腰に巻いた縄が景色を添える。自慢の逸品だが、誰も褒めてくれない。みんな目が無いんだなあ。
「目の眼」でもしっかり読んで欲しい。
(福岡市在住)