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皆さま この器ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)

konoutuwa01-1.jpg花:山法師 器:ネパール木壷(高さ約22.8cm)








(1)ネパールの木壷

 以前、雑誌で各界の名匠が愛用の古器を語る企画が流行ったことがある。そんな場で、写真家の濱谷浩さんが、ネパールのチャンと呼ぶ濁酒を容れる木の徳利を紹介されていた。
 ネパールといえばヒマラヤ山脈。ガラスや陶器より木器の方が得意なお国柄か。この徳利、木の特徴を活かして、胴に幾重にも等間隔のロクロ目を刻んだデザインが印象深く、忘れ難かった。きっと、アジア諸国はこんな民芸の宝庫に違いない。
 ところで、去年、僕は山で花を採っていて転倒骨折し、手術する破目になってしまった。痛い痛いと唸る枕元に、カミサンはどこで仕入れたのか、ネパールの木器を持ってきた。写真ではよく見えないが、胴に二筋の凹線、肩には凸線がくっきり。まさに三筋だ。それに蓋がつく。全体が五つに区切られているのである。カミサンいわく「五輪思想の現れだよ。きっと経筒ですよ」
 まさかネパールに経筒はない。生薬でも容れておいた壷だろう。この、おっとりとした姿は花に向く。快気祝いの花器は決まった。

konoutuwa01-2.jpg「目の眼」は骨董誌である。花より器を尊重するべきだろう。そんな思いから、この欄にも、ちょいちょい珍器・駄器を紹介させていただこう。ナニ、駄器だって? バカと器は使いよう、なのですぞ。
 花は器に免じて、季節はずれでもお許し下さい。今回は初夏の花、山法師(やまぼうし)である。(福岡市在住)