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皆さま この器ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)





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(7)タイ現代民芸の籠


 春の連休に本屋をのぞいてみると、古器に野花の本が平積みにしてあった。久しぶりの新刊だ。手に取って驚いた。器が凄い。超一級品揃いではないか。素敵な古器の写真集である。即座に求めた。
 家でよく見ると、花も決して負けていない。活け方がすばらしいだけではない。見たこともない珍らしい山野草を自在に使いこなして巧み。感嘆あるのみであった。
 でも、これ、高級すぎてぼくの教科書にはならないなあ。器ひとつ、平凡なサラリーマンのなれの果てには、手が出せるしろものではない。花だって、路線バスだけが移動手段のぼくには、高嶺の花以上、入手絶望だ。
 その点、畏友、奈良のお茶人が月刊誌に連載している花は、ぼくのよきお手本である。器こそ彼にはかなわないが、花は近所の里山や吾が家の庭で手に入るものばかり。それを、お茶人の鋭い感性を見事に活かして、発刺とした生命を与えてみせるのである。だから、ぼくの師匠たり得るのだ。
 ここで、ぼくの花遊びの一例をご覧いただこう。写真の白十字の花、山法師はどこの山にでもあるし、庭植えも多い。今回は吾が庭のを使った。五弁の白や紅の花は箱根空木というが、九州の山にも幾らでもある。
 器はタイの現代民芸。三つ一組で、千円少々だったと記憶する。こんな花なら、リビングに置いても映える。バカと鋏、いや、花と器は使いようである。そして、雑器と野花を活かす工夫をこらすのは、とても楽しいことなのだ。
utuwa01.jpg   花:山法師、箱根空木 器高約55cmこんなの、花や器に生涯をかける真摯な方たちには、児戯にも劣る遊びにちがいない。でも、何を相手にどのように生きるかは、人それぞれが自分で決めることなのである。
(福岡市在住