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皆さま この器ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)



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tanaka01.jpg             側面より







(8)米の検査器



「須恵器に俵壺っていうのがあるけど、俵(たわら)って何だい?」。若い読者の中には、そんな方がおられても、何の不思議もない。その昔、俵とは米を入れて運搬や保管に使った袋である。薬のカプセルを巨大にした形で、藁を編んで作った容器なのだ。
「戦後強くなったのは、女と靴下。」という文句をご存じだろうか。多分、昭和30年前後にはやったと思う。俵はこの文句の流行した頃から急速に紙袋に変わっていったのだ。でも、戦後も小学校の運動会では、「俵担ぎ」というオヤジ族の徒競争があった。重たいんだよ、俵は。担ぐだけで大変だ。カミさん族は菓子でも食べながら、涼しい顔して「とうちゃん、がんばれ!」。いつも損な巡り合せは、オヤジ族に決まっているじゃないか。不公平だ。
 え~と、一体何の話をするのだったっけ。そうそう、俵に詰めた米の品質検査だ。世には悪党の種が絶えない。俵に劣等米を詰めておきながら、中味はこれですと、優良米を見せる米商人は、いつの世にも居たにちがいない。そういうとき、この竹筒の先っぽを俵の藁の間にさし込むと、中の米が少しずつ竹筒に洩れ出てくる。だから、この竹筒さえ持っておけば、悪い奴に騙される心配がない。
 この筒を新橋の古玩店で見つけた時は、嬉しかった。さすが東京と、これを掘り出して来た店主の眼力に敬服した。が、実際に花を活けてみると、いささか使いづらい。所詮、漆桶などの花映りの良さには程遠いと思い知った。
tanaka02.jpg   花:松明草、篝火草 器高約30cm 花は松明草(たいまつそう)と篝火草(かがりびそう)である。赤い篝火草の花はよく目立つが、松明草の花はバックと同じ色なので、見づらくて御免なさい。夏は祭りのシーズンだよ。篝火を灯してみたかったまでである。(福岡市在住