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目の眼オンライン美術展レポート

山種美術館「ボストン美術館 浮世絵名品展 錦絵の黄金時代—清長、歌麿、写楽」展
2011年2月25日取材

_N307208.jpg 2011年は浮世絵展が各地で催され、名品を間近で観賞できるよい機会を提供している。その中でも話題を呼んでいるのが、「ボストン美術館 浮世絵名品展」。世界で指折りの浮世絵コレクションを所蔵するボストン美術館の5万点という膨大なコレクションの中から、浮世絵全盛期にあたる天明・寛政期の三大浮世絵師の作品が里帰りして展示されるだけに、大きな話題となっている。2010年8月の神戸を皮切りに、名古屋、東京、千葉、仙台で公開されるが、中心となる東京の山種美術館で催される展示を訪れた。


_N307199.jpg 山種美術館は山手線の恵比寿駅西口から歩いて10分ほど。恵比寿プライムスクエアの高層ビルの前を通り、ゆるやかな登り坂を歩くと、白い外観の美術館が現れる。展示スペースは地下にあり、広いスペースを区切って、はじめに清長、次に歌麿、最後に写楽と歌川豊国ら同時代の浮世絵師の各ブースに分かれている。。




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_N307177.jpg目の眼でもおなじみの永田生慈さん
日本側の監修者である美術評論家の永田生慈さんは、「今回の展示は、世界でも指折りの浮世絵コレクションです。クオリティの高さは他にはないほどで、数日前に摺ったのではと思わせるようなものばかり。すべて200年以上昔の作品だが、これほどまではっきりと残っている色合いに特に注目して見てほしい」と語る。









_N307194.jpg監修者のセーラ・トンプソンさん清長の浮世絵は、かおりたつような艶やかな美人画が多く、歌麿はしなやかな美人画が目を引く。ひとつひとつの作品に奥行きがあり、実物ならではの存在感を間近で感じることができる。ボストン美術館の監修者であるセーラ・トンプソンさんは、「歌麿は普通の女性を好んで描きました。たとえば『台所』という作品では、日常の情景がみごとに描写されています。竈に銀摺りが使われていて、非常に状態がよく、2枚綴りでこわれやすいので、貸し出しするかどうか検討されましたが、山種美術館のみの出品となります」と語るように、今回の展示では貴重な作品も数多く見ることができる。




_N307205.jpg写楽の名作「中山富三郎の宮城野」が迎えてくれるまた、歌麿の「忠臣蔵 七段目」では、校合摺と完成作品が展示されている。校合摺は、摺りの出来具合をチェックし、色指定するのに使われたもの。落款、極めはまだ彫られていないが、技術を知るうえでも重要という。写楽の「市川富右衛門の猪の熊門兵衛」では、裏面に押された元所有者W・S・ビゲロー(Bigelow)の印がすけて見えている。もうひとつの桜のような模様の印も見えるが、だれの印かは分かっていない。そんな歴史や浮世絵に閉じ込められている時間のことを考えながら浮世絵を見るのも楽しい。





_N307219.jpg第二展示室では肉筆画も展示なお、4月26日〜6月5日には千葉市美術館で、また6月24日〜8月14日には仙台市博物館で巡回展が行われるが、一部の作品は展示替えになるという。また、展示された作品は今後5年間は展示される予定がなく、清長、歌麿、写楽の3人が揃う展示も企画されるかは未知数だけに、ぜひ訪れて観賞したい。
 今回の展示を記念して、1階のカフェでは作品をイメージしたオリジナル和菓子でひとときを過ごせるほか、ミュージアムショップでは漆塗りのお盆や風呂敷、ブックカバー、クリアファイルなど、オリジナルグッズも多数揃えている。


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ボストン美術館 浮世絵名品展ホームページ
山種美術館「ボストン美術館 浮世絵名品展 錦絵の黄金時代—清長、歌麿、写楽」展
2011年2月26日(土)- 4月17日(日)

Photographs © 2011 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved.