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目の眼オンライン美術展レポート

「ウツクシキ」桃山の茶 秀吉、織部そして宗箇
生誕四五〇年記念 
「上田宗箇 武将茶人の世界展」
2011年12月30日取材

 目の眼2月号でも特集した「上田宗箇(うえだそうこ) 武将茶人の世界展」が銀座松屋で開幕しました。生誕450年を記念した今回の展示は、上田宗箇の本来の武将である面と、茶人としての面の両方を紹介するもので、武士と茶道を融合した展示は今までに無かったものといえます。最近は山田芳裕さんの講談社のコミックやNHKのアニメ『へうげもの』で注目されている戦国武将の茶の道。初日の会場には年末にもかかわらず、若い人の姿も目につきました。

DSC_4954.jpgエントランス
DSC_4950.jpg      茶席を模した入口正面
DSC_4941.jpg        仏胴腰取丸胴具足ほかで       武将の面を紹介
DSC_4919.jpg茶室「遠鐘」を再現
DSC_4930.jpg宗箇のウツクシキ世界


生誕四五〇年記念 「上田宗箇 武将茶人の世界展」
銀座松屋8階イベントスクエア
2011年12月30日(金)-2012年1月16日(月) 10:00-20:00
<12月31日(土)18:00、1月2日(月)・3日(火)19:30、最終日17:00閉場。入場は閉場の30分前まで。1月2日(月)は9:30開場。1月1日(祝・日)は休業。>
入場料 一般1,000円

※巡回展としてひろしま美術館で2012年2月11日(土)〜3月25日(日)まで開催。
ホームページホームページ

DSC_4925.jpg「鎖の間」

 会場は銀座松屋の8階。正面入口を入ると、宗箇が広島城内に拝領した上屋敷の中庭で催したであろう桜花の下の茶会で出迎えてくれます。展示は武将としての人物を紹介する第一章「武将・上田宗箇」から、第二章「武将茶人の創意」、第三章「武将茶人の創作茶道具」、第四章「宗箇の『ウツクシキ』世界」と続き、かつて広島城内の上田家上屋敷に造られた茶室「遠鐘(えんしょう)」や「鎖の間」を再現したり、映像の利用などで多角的に上田宗箇の世界観を知ることができます。

 第一章「武将・上田宗箇」では、豊臣秀吉書状や千利休書状、徳川家康書状などの書や画で時代背景や宗箇の勇猛果敢な武将としての面を知ることができます。戦では先頭に立つ一番槍を常にめざし、本能寺の変で織田信澄の首級をあげると秀吉に認められ、大坂夏の陣では豊臣方の軍勢に打撃を与えて家康・秀忠に賞賛されるなど、義に厚く戦功に秀でた宗箇の力量が展示品からも伝わってきます。大坂夏の陣で迫る敵を前に竹藪の竹を切って茶杓を作ったという「敵がくれ」は宗箇の度胸を感じさせるエピソードです。また、400年の時を経てその色を伝える陣羽織や大胆な花柄が散らされた復元された衣装からは、現代でも違和感のないデザインのセンスをうかがえます。

 第二章「武将茶人の創意」では、会場に再現された茶室「遠鐘」、「鎖の間・建渓(けんけい)」で宗箇がめざした茶席の空間を知ることができます。利休の死後、古田織部の茶の弟子となった宗箇は、織部とともに新しい武家茶を創造。自身で茶席や庭、道具を作ったほか、織部と協働して九州の窯元に細かな注文を出し、茶の湯の個性美の確立に一役かったことが最近の研究結果から判明しています。第三章「武将茶人の創作茶道具」では唐津や薩摩、上野、高取から、美濃、伊賀、備前といった織部・宗箇の指導を受けた茶道具を紹介。それぞれの個性の中にも一貫として通じる美意識を感じることができます。

 第四章は「宗箇の『ウツクシキ』世界」。「ウツクシキ」は宗箇独自の美意識を表わす言葉で、豪快な中にも絶妙なバランスで配置される面の構成が印象に残ります。なかでも、代表作とされる茶碗「さても」には引きつけられます。静かな佇まいの中で発する重厚感は他を圧倒するほど。しかし、外観の豪宕さとは裏腹な内側のていねいな節目に、宗箇ならではの美意識を垣間見ることができます。また、最後に展示されている竹花生と茶杓も印象的。思いを込めて竹を断ち切った鉈跡が力強さを感じさせる竹花生。茶杓は並べられている利休作がしなやかさを持ち合わせているのに比べ、力感にあふれているのが宗箇らしいところです。(編集部 安藤)

展示されている作品の解説や上田宗箇流十六代家元 上田宗冏氏インタヴュー記事も掲載した目の眼2月号は会場でも販売しています。

「上田宗箇 武将茶人の世界展」オープニングセレモニー

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 1月5日、来賓が多数出席し、「上田宗箇 武将茶人の世界展」オープニングセレモニーが開催されました。広島県知事湯崎英彦氏、上田宗箇流家元上田宗冏氏の挨拶のあと、華々しくテープカットが行われました。
 1月12日からは、会場隣りで「広島物産展」も開催され、広島お好み焼や生かきなどの美味しいものや、地元でもなかなか手に入らない「手仕事」が並ぶとのこと。お茶席も設けられ、新春らしい盛りだくさんのイベント。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。(編集部 小林)