onlineロゴ2.jpg

骨董・古美術・工芸のポータルサイトmenomeonline

_N307411b.jpg

目の眼オンライン美術展レポート

東京国立博物館 特別展「写楽」
2011年5月2日 取材

_N307407b.jpg
平成館の2階フロアまで
エスカレーターを利用します。


_N307399b.jpg
第1章では写楽以前の画風を紹介。
歌舞伎図屏風 菱川師宣 東京国立博物館蔵


_N307405b.jpg
第4章は写楽とライバルたち。
三代目坂田半五郎を写楽や他の絵師が
どう描いたかを見比べられる


_N307427b.jpg
版画は植物性の絵の具を用いているため退色しやすい。
保存状態のよい版画を比べるともとの色を想像できる。


_N307416b.jpg
説明は日本語と英語の表記。
機器を借りる音声ガイドは春風亭昇太さんの
語りで面白くわかりやすい


_N307436b.jpg
写楽の作品がこれだけ並ぶと壮観。
重要文化財、重要美術品も多数


_N307437b.jpg
芝居絵以外でも写楽らしさが発揮されている。
7歳の相撲アイドル大童山の版画は
本誌目の眼でもおなじみの中右瑛さんのコレクション
7□

_N307431b.jpg
ミュージアムショップではいろいろなグッズを販売




 震災の影響で延期となっていた特別展「写楽」が5月1日から6月12日までの日程で公開されています。会場は上野公園の東京国立博物館平成館。浮世絵の大規模展覧会が各所で開かれる2011年において、話題の展覧会のひとつです。

 東洲斎写楽はご存じのように、寛政6年(1794)に突如浮世絵界にデビューし、わずか10カ月後に忽然と姿を消した、幻の浮世絵師として知られています。その作品は「大首絵」と呼ばれる第1期の作品から第4期まで、約140図が知られています。

 今回の展示は、写楽の名を有名にした第1期の28図ばかりでなく、全4期のほぼすべての作品、全140図、約170枚を展示する画期的な試み。国内ばかりでなく、海外の美術館の協力を得て、写楽作品が一堂に会する奇跡を体験する事ができます。

 平成館の第1室、第2室を使って行われる展示は5つのテーマごとに分けられています。第1章のテーマは、写楽以前の役者絵。写楽が登場した背景が紹介されています。第2章のテーマは蔦屋重三郎。浮世絵プロデューサーとして歌麿を美人画絵師で売り出す一方、写楽を役者絵師として登用しました。歌麿の有名な「ポペンを吹く娘」や「高島おひさ」「難波屋おきた」などを間近で観賞できるのも魅力となっています。

 第3章は写楽の全貌。第1期から4期までの作品がずらりと並べられていて壮観です。やはり「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」ほか、特徴的な大首絵に目がいってしまいますが、第2期以降の全身を写した作品も、細かく見ると躍動感があったり、表情の移ろいがていねいに描かれていたりと、写楽がただものではないことがどの作品からでも伝わってきます。版の違う同じ絵が2枚並んでいるところもあり、版によって微妙に細部が異なっていることを見る事ができます。それにしても、海外所蔵の作品も多い写楽の大首絵28図がすべてワンフロアに並んでいる事は驚きのひとことです。

 第4章は写楽とライバルたち。同じ役者を写楽と別の絵師とが描いたら、どのように違うかがよくわかります。表情のデティールをありのままに描いた写楽。美しさやきれいさを強調した他の絵師。ブロマイドという観点からすると他の絵師のほうが需要はあったことは事実ですが、こと芸術性という点で作品を見れば、対象を見事なまでに具現化した写楽の特異性を感じる事ができます。第5章では、写楽以降の絵師の作品から、写楽の影響を検証します。

 展示総数287点。じっくりと見ていくと、たちまち時間が過ぎていくほどの膨大な展示です。ぜひたっぷり時間をとって、写楽の世界に入り込んで下さい。なお、ミュージアムストアには、絵はがきやストラップ、Tシャツのほかに、人気の一澤信三郎帆布のかばん、「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」の立体フィギュアなどもありました。また、1階のガイダンスルームでは、なぎら健壱さんのおしゃべりによる「魅力を探せ 写楽」のビデオも流されていて、作品以外での楽しみも盛りだくさんです。(編集部安藤博祥)



poster.jpg


特別展「写楽」
東京国立博物館□□□特設ホームページ
2011年5月1日(日)- 6月12日(日)