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目の眼オンライン美術展レポート

法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展
「法然と親鸞 ゆかりの名宝」展
2011年10月24日取材

 東京国立博物館平成館にて、「法然と親鸞 ゆかりの名宝」展がはじまりました。今年の法然上人800回大遠忌、親鸞聖人750回大遠忌にあたって、浄土宗、浄土真宗の名宝が一堂に会する史上はじめての展覧会です。開会の挨拶では、この展覧会開催については、各宗派の方々が二年もの間、議論をかわしたという話も披露されていました(写真1)。
 平安時代末期、災害と戦乱のさなかにあって、修行や寄進などをしなくとも念仏をとなえることで極楽往生ができると説いた法然と、その教えを受け継ぎ、さらに深めた40歳年下の弟子親鸞。
 展示は、二人の生涯と思想、信仰のひろがりをたどっていく構成になっています(写真2)。

honen01.jpg  (写真1)
honen02.jpg(写真2)
honen03.jpg      (写真3)重文・當麻寺奥院蔵
honen04.jpg(写真4)
honen05.jpg(写真5)
honen07.jpg           (写真6)        重文・浄土宗蔵

法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」
2011年10月25日(火)〜12月4日(日)
東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間
9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、会期中の金曜日は20:00まで開館)
休館日
月曜日
一般1500円、大学生1200円、高校生900円(前売り割引きあり)
ホームページ

honen08.jpg(写真7)重文・浄光明寺蔵

 まずは法然と親鸞の頂相(肖像画、木彫)の数々。その御影からは、人々に慕われた穏やかで真摯な人柄が感じられます。(写真3 法然上人坐像) さらに進むと、法然の著した『選択本願念仏集』と親鸞の著した『教行信証』が展示されています。巻頭の内題が法然自筆と伝えられる京都・蘆山寺所蔵の『選択本願念仏集(蘆山寺本)』、京都・東本願寺所蔵の親鸞自筆の『教行信証(坂東本)』を含む各3点。合わせて見られる機会はめったにないでしょう。(写真4、5 『選択本願念仏集』と『教行信証』)
 親鸞の書蹟は、注釈や書状など多く遺されていますが、なかでも国宝『観無量寿経註』(京都・西本願寺蔵)は、経典の本文の周囲に隙間なく注釈を細かい文字で書き込まれており、その緻密さに驚かされます。親鸞の仏典を読み解こうとする熱い思いと真面目な性格が伝わってきました。
 二人の生涯を描いた伝記絵も数多く出展されています。京都・知恩院所蔵『法然上人行状絵図』の展示では特に、幼い法然が幸せに暮らしていた場面から一転、家を襲われ、9歳の法然も弓矢で応戦する様子、傷がもとで亡くなる父から仇討ちをせず仏道に入るよう進められる場面が胸を打ちます。(写真8 絵図の展示風景)

honen06.jpg(写真8)
honen09.jpg      (写真9)専修寺・佛光寺・善重寺蔵

 浄土宗と浄土真宗の本尊、阿弥陀如来。おだやかな阿弥陀如来像や来迎図からは、厳しい修行や功徳がなくとも救いがあるというやさしい教えを、人々に体感させたことでしょう。
 法然の一周忌に作られた阿弥陀如来立像(浄土宗蔵)は、体内に4万6千人あまりの結縁交名(縁を結んだ人々の名簿)が納められていたそうです(写真6)
 阿弥陀三尊坐像(神奈川・浄光明寺蔵)は脇侍の菩薩も坐像である点や中尊が説法印を結ぶところが、鎌倉時代の像としては珍しいもの(写真7)
 また、親鸞は仏教をはじめて日本に取り入れた聖徳太子を篤く敬っていたそうで、浄土真宗では、聖徳太子像や聖徳太子絵伝が祀られるようになりました(写真9)
 二人の入滅後も、多くの弟子や信者によって伝えられ、広まってきた浄土宗と浄土真宗。『一流相承系図』(京都・長性院蔵)では、僧侶だけではなく、世俗の男女も描かれていて、僧俗男女の隔たりなく教えを伝えるという法然と親鸞の思想が、のちの弟子たちにも受け継がれていったことが感じられます。
 法然と親鸞ゆかりの宝物の数々は、人を圧倒するような華やかなものではありませんが、万人を救おうとしたおだやかでやさしい教えがこめられているように思います。(編集部 小林)