目の眼オンライン美術展レポート
北京故宮博物院200選
〈特別展〉
「北京故宮博物院200選」
2012年1月4日取材
東京上野の東京国立博物館で北京故宮博物院の逸品200点を展示する「北京故宮博物院200選」が始まりました。中国でもめったに公開されず、国外では初めてという「清明上河図(せいめいじょうかず)」ほか、展示されている作品はすべてすぐれたものばかり。楽しみにしている人も多く、清明上河図の見学には長い列ができるほどです。1月4日の報道内覧会の様子をレポートします。
第一部 故宮博物院の至宝
革新的な黄庭堅らを始め書の銘品も多い
王淵(左)ら元時代の代表的作品
第二部は清朝宮廷文化の精粋
孔雀の羽を敷き詰め金糸絹糸撚銀糸などで縫った龍袍(吉服)
景徳鎮窯の青花龍濤文八角瓶と釉裏紅唐草文水注
磁州窯の白釉褐彩内府銘瓶
仏像の展示も興味深い
日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年〈特別展〉「北京故宮博物院200選」
会 場/東京国立博物館平成館
東京都台東区上野公園13-9
会 期/1月2日(月・休)~2月19日(日)
時 間/9時30分~17時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日(1月9日開館、10日休館)
問合せ/03-5777-8600
(ハローダイヤル)
入場料 一般1500円
清明上河図の展示は1月24日まで。
ホームページで現在の混雑具合を掲載
清明上河図
日本の国宝にあたる第一級文物、しかも日本初公開のものも数多く出品され、1月2日の初日から5000人以上の来場者でにぎわっている「北京故宮博物院200選」展。 なかでも神品!といわれる「清明上河図巻」には、長蛇の列ができているそうです。なにしろ精緻な筆で書き込まれた人々の表情と城市の風物に、誰もが思わずじっくり目をこらしたくなりますから仕方ありません。
幅24.8㎝、長さ528㎝の巻物の中に、川に沿ってさかのぼるにつれ、次第に賑やかになっていく町並みと、川を渡る船。それを操る船頭たち、橋の上の群衆。773人ともいわれるたくさんの人々が生き生きと描かれています。ここは並ぶことを覚悟して、一日時間をたっぷり取って出かけましょう。
映像で清明上河図の詳細も解説
間近から清明上河図を見ることができるのが魅力
第一部の見どころは、「清明上河図」だけではありません。中国絵画の最高峰といわれ、門外不出とされていた宋元時代の書画が41件、そのうち39件は日本初公開だそうです。巧みな楷書、行書、草書の数々。のびやかで美しい筆致を見るだけで清々しい気持ちになります。お気に入りの書を見つけてみるのも楽しそうです。
絵画もまた、静謐さがただよう名品ぞろい。趙孟頫(ちょうもうふ 1254〜1322)の「水村図」は担当学芸員の方が「清明上河図」にまさるとも劣らない名品と太鼓判を押す一品。また、趙芾(ちょうふつ 1131〜62)の「長江万里図巻」は、長江の雄大な流れと峻厳な山々が墨の濃淡だけで見事に表現され、長江の飛沫が煙雲となってわき起こる大気の様子まで感じられます。
この他、清朝皇室が蒐集した名宝を中心に、古代の青銅器、世界で80点しか確認されていないという汝窯の青磁盤などの陶磁器、実際に宮廷で使われた漆器、琺瑯器など、一級の品々が並び、第一部だけでも観覧にだいぶ時間がかかってしまいました。
第二部はうってかわって、清朝の最盛期といわれる第6代皇帝乾隆帝(在位1735〜96)時代の紫禁城を思わせる絢爛豪華な展示です。第一章 清朝の礼節文化、第二章 清朝の文化事業、第三章 清朝の宗教、第四章 清朝の国際交流に分かれ、紫禁城を彩った名品から、清朝の文化を総覧できます。
清朝は、北方の少数民族満州族が建てた王朝です。歴代皇帝は、中国歴代王朝の伝統を尊重し、異文化もまた受け入れることで、多民族国家を統一しようとしました。
皇帝は文人としての教養を身につけ、満州族の礼装のほかにも漢民族、モンゴル族の衣装などを着た肖像画を描かせるなど、清朝の多面性を示すとともに、盛大な国内視察を何度も行って、清朝の権威の衆知しました。
その中でも乾隆帝は、生涯に5万点以上もの漢詩を作り、名筆、名宝の図譜を編纂させるなど、文人皇帝として名高い人物。満州族の礼服に身を包んだ肖像、漢族の衣装で書画骨董に囲まれた肖像、菩薩王像としてチベット仏教画の中に収まる肖像は、まさに清朝帝国を体現しているようです。そして豪華な礼服と宝飾、その権力の大きさを感じさせます。
最近では放送された西太后を描いた日中合作ドラマ「蒼穹の昴」などで、清朝に興味を持たれた方も多いようです。もっと清朝を知りたいという方には、めったに見ることのできない名宝もさることながら、清朝の奥深さと多様さを知ることができるという点でも見逃せない展覧会です。(編集部 小林)