目の眼オンライン美術展レポート
女性美 The Beauties He Loved
松岡美術館
《アフロディテ》テラコッタ
ギリシア ヘレニズム期BC3〜2世紀
《サッフォー頭部》ヘレニズム期 B.C3世紀
《三彩婦人》中国 唐時代 8世紀
《地母神像》 テラコッタ
北シリア BC2000年紀
《婦人像》テラコッタ
ギリシア ヘレニズム期BC4〜3世紀
《王女頭部》石灰岩
エジプト 第18王朝 BC 1352—1336年頃
あなたの美神(ヴィーナス)に出逢う春
黒川裕子(松岡美術館学芸員)
古代から、女性の姿は美や豊穣そして、命の象徴として神聖視され、芸術の世界でも重要なモチーフのひとつとなってきました。特に、神々と人々の関係がとても強かった時代、「女神」の存在は生活にも大きな影響を及ぼしていたでしょう。松岡美術館では現在「女性美 The Beauties He Loved」と題し、松岡コレクションの中の「女性」をテーマとした美術を一堂に集め、ご紹介しています。
創立者 松岡清次郎は、明治27年、築地小田原町に生まれました。大正6年、弱冠23歳で貿易会社を立ち上げ、チェコスロバキアから輸入した人造ダイヤ(今で言うスワロフスキークリスタル)をあしらった女性向けのブローチや、髪飾りを製造・販売しました。時まさに大正ロマン華やかなりし時代、愛らしい商品は女性たちをとりこにし、人気を博しました。
当時から、美しいものに憧れていた松岡は日本の美術品にも心惹かれ、そのころ両国にあった「東京美術倶楽部」の売り立てにも足繁く通ったようです。手に入れられるものは限られていましたが、良い美術品をたくさん目の当たりにすることができ、審美眼も養われたのではないでしょうか。60年以上の歳月をかけ、松岡はさまざまな美術品を蒐集しました。骨董店でも、海外のオークションでも、日本の公募展でも自ら足を運び、一つひとつ自分の目で選びコレクションの幅を広げていきました。今回ご紹介している「女性たち」も清次郎の好みがいたるところに反映されています。
たとえば、当館でも最も古い時代の文物のひとつ《横たわる女人像》は紀元前5600年頃にアナトリアで作られたテラコッタです。エジプトの女神たちは、動物に象徴された神秘の姿を示し、典型的なアマルナ美術の《王女頭部》は愛らしい少女の姿を伝えています。アフロディテに代表されるギリシアの美しい神々、タナグラの優美な婦人たち、ローマの写実的な女性たち。そして、インドの豊満な女神たち、中国の陶俑、日本人の画家たちによる女性たち。さらにエミール・アントワーヌ・ブールデルやヘンリー・ムア、エミリオ・グレコなど巨匠たちの彫刻と、今回は日本の彫刻家の作品まで多彩にご紹介しています。
《横たわる女人像》テラコッタ アナトリア B.C.5600年頃
一個人のプライベートコレクションではありますが、その中にも、時代や地域によってさまざまに変化してきた女性たちの姿と、変わらずに受け継がれてきた姿が現れています。
古今東西の美しい女性たちと、春のひと時を、ゆっくりすごされてはいかがでしょう。
「女性美 The Beauties He Loved」展
会 期/開催中〜4月15日(日)
会 場/松岡美術館
東京都港区白金台5丁目12番6号
開館時間/10時〜17時※入館は16時30分まで
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)
入場料/一般800円/中高大生500円
問い合わせ/03-5449-0251
ホームページ
※関連イベント
4月1日(日)・8日(日)午後5時30分よりロビーにて、地唄舞の観賞と美しいしぐさのレクチャー「大和撫子の粋、しぐさの美」を開催します。詳細はHPまたはちらしをご覧ください。