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目の眼オンライン美術展レポート

ボストン美術館 日本美術の至宝
東京国立博物館

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入口では平櫛田中作の岡倉覚三像が迎えてくれる

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平成館は天井が高いので開放的な展示

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「仏のかたち 神のすがた」コーナー
には鎌倉時代作の仏像が並ぶ

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「海を渡った二大絵巻」
平治物語絵巻の部分

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「静寂と輝き」
初期狩野派の作品が並ぶ

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ボストン美術館の日本美術コレクションを
始めたフェノロサらを紹介

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第2会場の「アメリカ人を魅了
した日本のわざ」

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「華ひらく近世絵画」
長谷川等伯の龍虎図屏風

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狩野永納筆「四季花鳥図屏風」

特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」
会 期/3月20日(火曜・祝)〜6月10日(日曜)
会 場/東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間/午前9時30分〜午後5時(金曜日は午後8時、土・日曜、祝日は午後6時まで)
休館日/月曜日(4月30日は開館)
入場料/一般1500円
問い合わせ/ハローダイヤル 03-5777-8600
ホームページ
この展覧会は東京国立博物館に続いて名古屋ボストン美術館、九州国立博物館、大阪市立美術館でも催されます。

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「弥勒菩薩立像」 快慶作 鎌倉時代

  上野の東京国立博物館で、「ボストン美術館 日本美術の至宝」展が始まりました。 ボストン美術館の日本美術は、明治時代きっての美学者岡倉天心(1863〜1913)と、東京大学教授として来日し、日本美術を高く評価したアーネスト・フェノロサ(1853〜1908)、ボストンの医師で日本美術コレクターであったウィリアム・ビゲロー(1850〜1926)によって収集されたもので、その高い審美眼により、多くの名品がボストン美術館の所蔵となりました。日本にあれば、国宝とされるものが目白押しです。

 会場はジャンル別に分けられたシンプルな構成で、第一展示室は仏画、仏像からはじまり、中世水墨画と初期狩野派、「吉備大臣入唐絵巻」「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」の二大絵巻が展示されています。第二展示室は染織と刀剣、桃山から江戸にかけての近世絵画、そして本展の最大の見どころ曽我蕭白が最後を飾っています。

 品質保持のために薄暗い第一展示室に入ると、まず惹きつけられるのは、奈良時代、東大寺法華堂を飾っていたという「法華堂根本曼荼羅図」。損傷が激しく、絵具も剥落していますが、中央の釈迦如来と両脇侍、衆生の色彩がよく残っています。奈良時代、西方の雰囲気がのこる美しい表情の仏の図で、なかなか見ることのできない貴重な仏画です。

 次のフロアには、有名な「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代・12世紀後半)、「平治物語絵巻三条殿夜討巻」(鎌倉時代・13世紀後半)が長いガラスケースの中に広げられています。「吉備大臣入唐絵巻」は4巻全長25mを全て公開。写実的に描かれた人々の表情や躍動感のある動きはもちろん、鮮やかな色彩と保存状態の良さにも驚かされます。

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「十六羅漢図」伊藤若冲筆

 最後の展示室に向かってきびすを返した途端に眼に飛び込んでくる奇才と呼ばれる江戸時代の絵師、曽我蕭白(1730〜81)の「雲龍図」(宝暦13年1763年)。墨を飛び散らせたスピード感のある太い描線は、まさに龍がのたうち、こちらをにらみつけた瞬間のようで、その迫力には圧倒されます。
 本図は寺院の襖絵で、研究の結果8面であったことがわかっています。そのうちの頭と尾の部分の4枚がボストン美術館に渡り、襖から剥がされ、丸められた状態で保管されてきました。今回、修復作業が行われ、初めて襖絵として並べたとのことで、日本初公開というだけでなく、ボストン美術館でも襖の仕立てで展示したことはないそうです。
 ボストン美術館には、この「雲龍図」と全く同じ寸法、同じ紙質で「鷹図」2面も残されており、同じ寺院の襖絵であったことは間違いないとのこと。その「鷹図」はボストン美術館の担当者からの要望で両方が一緒に見えるように展示されています。「鷹図」は「雲龍図」とうってかわって、繊細な描写と濃淡で鷹の羽毛が表現され、背景も淡く、静的な印象です。高度な技法を持ち、様々に描きわけた蕭白の才能が感じられます。
 その他にも蕭白の大作が数多く里帰りしていますが、なかでも中国の4人の儒学者を描いた「商山四皓図屏風」は蕭白の独創性とダイナミックさを顕著に感じることができる作品です。

 その他、快慶、狩野永徳、長谷川等伯、尾形光琳、伊藤若冲と、日本美術に名を残した人々の作品が並び、刀剣や小袖、能装束も日本初公開と、見どころ満載の展覧会です。(編集部 小林)

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「雲龍図」曽我蕭白作 江戸時代