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目の眼オンライン美術展レポート

KORIN展 ー国宝「「燕子花図」とメトロポリタン美術館蔵「八橋図」ー
根津美術館

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国宝「燕子花図屏風」

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展示室1・2で催される

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「燕子花図屏風」へと続く初期の作品も展示

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最晩年の「四季草花図屏風」など草花図は多数制作された

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光琳の百回忌に酒井抱一によって催された『光琳百図』で
取り上げられた作品も展示

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伝尾形光琳とされる「業平蒔絵硯箱」は凝った意匠の琳派らしい硯箱

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鮮やかな色彩のコントラストが目を引く
酒井抱一筆の「青楓朱楓図屏風」


KORIN展 ー国宝「「燕子花図」とメトロポリタン美術館蔵「八橋図」ー

会 期/4月21日(土曜)〜5月20日(日曜)
会 場/根津美術館(東京メトロ表参道駅から徒歩10分)
開館時間/午前10時〜午後5時(4月28日からは午後6時まで)
休館日/月曜日(4月30日は開館)
入場料/一般1200円
問い合わせ/03-3400-2536
ホームページ






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メトロポリタン美術館蔵「八橋図屏風」

 近世日本で最も有名な絵師の一人、尾形光琳(1658〜1716)。その作品は日本美術好きな方なら、いずれかは展覧会でご覧になったことがあるだろう。しかし今回の根津美術館のKORIN展は、「燕子花(かきつばた)図屏風」(根津美術館蔵)と「八橋図屏風」(ニューヨーク・メトロポリタン美術館蔵)の同時展示という特別な展覧会である。
「八橋図屏風」は大正4年に三越呉服店で開催された「光琳二百年忌記念光琳遺品展覧会」に同時出品されたのち、何度か所蔵者が変わり、戦後、メトロポリタン美術館の所蔵となった。それから約100年ぶりとなる同時展示だが、大正4年の展示では並べて展示されたとは限らないということで、並んだ両作品を見ることができるのは本展が初だという。
 この作品は、ご存じのように、『伊勢物語』の中で、在原業平が東下りの途中で立ち寄った八橋における挿話が元になっている。咲き誇る燕子花を見て、「かきつばた」の語にかけて、都に残してきた妻をしのぶ歌を詠む。この物語は人々に愛され、絵巻物や工芸として数々の作品を生んできた。
 尾形光琳はこの物語をとても気に入っていたようで、何度も作品として取り上げている。
 さて、このめったにない機会に「燕子花図屏風」と「八橋図屏風」を見比べると、その違いは橋のあるなしだけではない。絵具の濃さや描き方もまるで違っていて面白い。「燕子花図屏風」の方が顔料がたっぷり使われて、藍色が濃くぽってりとしている。「八橋図屏風」は絵具も薄目で白い部分も見えて明るく、軽さが感じられる。「燕子花図屏風」が先に描かれたと考えられるという。光琳の描き方の工夫や気持ちの変化の現れなのだろう。
 この他、初期作品である「十二ヶ月歌意図屏風」や、伊勢物語の場面として業平が描き込まれている「伊勢物語八橋図」、燕子花の花のみを描いた軸「燕子花図」、「夏草図屏風」、伝尾形光琳とされる「業平蒔絵硯箱」などの作品が一堂に会し、尾形光琳の生涯にわたる制作が見渡せる構成になっている(前期・後期で入れ替えあり)。

 根津美術館の庭園では、燕子花が4月下旬から5月にかけて開花するという。見頃に合わせて出かけてみてはいかがだろうか。(編集部 小林)

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都心にありながら深山の趣漂う庭園