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目の眼オンライン美術展レポート

越境する日本人―工芸家が夢みたアジア 1910s-1945―
東京国立近代美術館工芸館

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明治43年築の洋館で催される

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大陸に対する憧れの象徴の一つでもあった駱駝を描いた
山鹿清華の壁掛けが第1部の正面を飾る

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浅川兄弟の貴重な資料も見逃せない

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板谷波山《霙青磁牡丹彫文花瓶》
1925年 東京国立近代美術館蔵

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六角紫水《理想界の図蒔絵手箱》
1929年 広島県立美術館蔵

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5世紀の雲岡石窟伎楽天像に六代 清水六兵衛、
富本憲吉、香取秀真らの作品が独自の世界を奏でる

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香取秀真ら工芸済々会や七日会の作品も紹介

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河井寛次郎が考案した竹家具

越境する日本人―工芸家が夢みたアジア 1910s-1945―

会 期/4月24日(火曜)〜7月16日(月曜・祝日)
会 場/東京国立近代美術館工芸館(東京メトロ竹橋駅から徒歩8分)
開館時間/午前10時〜午後5時
休館日/月曜日(4月30日、7月16日は開館)
入場料/一般500円
問い合わせ/03-5777-8600(ハローダイヤル)
ホームページ
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北大路魯山人《萌葱金襴手鳳凰文煎茶碗》
1939年頃 東京国立近代美術館蔵

 皇居・北の丸公園の緑に包まれた洋館、東京国立近代美術館工芸館で「越境する日本人 ー工芸家が夢見たアジア 1910s-1945」が始まりました。1910年代といえば、ちょうど明治から大正に年号が変わり、世界では第一次世界大戦やロシア革命が起きるなど、激動の時代に突入した頃。アジアも例外ではなく、大きな変化のうねりが渦巻いていました。
 近代国家を歩んでいた日本ですが、当時の工芸家にとっては日本にはないものが大陸にはあるという認識があり、多くの工芸家が海を渡って文化や作品に触れ、自分の知識として吸収していきました。今回の展示は、アジアとの接点となるきっかけや、アジアに渡った作家の作品を紹介する画期的な展覧会です。1.「アジア」へのまなざし、2.1910~20年代の「新古典派」、3.唐三彩、磁州窯、李朝ー新しい美の規範、4.越境する陶芸家ー朝鮮、満州にて、5.「もうひとつのモダニズム」の5部構成で、第1部では、梅原龍三郎がパリに並ぶ都市として好んだ北京時代の作品と収集した古陶磁を展示するほか、朝鮮陶磁に魅せられた浅川兄弟の研究成果、柳宗悦のコレクションを通して、工芸家のアジアへの熱視線を紹介しています。
 第2部では中国や朝鮮の工芸を研究し、その技法を取り入れた作品が昭和初期に盛んに作られるようになったことを紹介。第3部では、大正時代に注目を浴びた唐三彩、磁州窯、李朝と、それを元に独自の技法で無比の作品へと昇華した河井寛次郎や石黒宗麿、浜田庄司らの陶磁器が並びます。なかでも、柳宗悦と朝鮮に同行した富本憲吉が残した「李朝陶器写生巻」は、朝鮮の風物や陶器が生き生きと写されていて目を引きます。
 日本の海外進出にともなって移り住んだ工芸家も多く、南満州鉄道の中央研究所に赴任した小森忍が帰国後に瀬戸に開いた窯での作品は青磁や染付ほか、中国陶磁の特色を正確に捉えていて、日本の窯業界に大きな影響を与えました。工芸家の視点を通して激動の時代を紹介する今回の展示は、西欧の近代に対するアジアのもうひとつの近代という面でもとても有意義な展示です。
 関連イベントとして、「中国に渡った古美術商ー山中定之助と繭山松太郎」、「朝鮮に魅せられた兄弟ー浅川伯教と巧」ほか、5月中旬から7回の連続講座が行われ、7月14日にはシンポジウム「オリエンタルモダニティ」も催されるなど、熱の入った展覧会となっています。(編集部安藤)

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富本憲吉李朝陶器写生巻
染付陶板京城東大門満月

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作家38名、工芸品127点を展示
期間中一部を入れ替える予定

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日本のアールデコの香りが高い
南満洲鉄道のポスターも貴重