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目の眼オンライン美術展レポート

「中世人の花会と茶会」展 
根津美術館

【1】赤楽茶碗 銘 無一物.jpg
重要文化財 赤楽茶碗  銘 無一物  長次郎作 
桃山時代  16世紀  兵庫・頴川美術館蔵

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展示室1・2で催される


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中世のしつらいを再現


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千利休ゆかりの品も展示


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不思議な重量感を漂わす「銘 無一物」


【3】井戸香炉.jpg
重要美術品  井戸香炉  銘 此の世 
朝鮮・朝鮮時代  16世紀  根津美術館蔵

【4】曜変天目茶碗.jpg
重要美術品  曜変天目茶碗  建窯系 
中国・南宋時代  13世紀  根津美術館蔵

【5】砂張釣舟花生.jpg
砂張釣舟花生  銘 艜(ひらた)  東南アジア 
15~16世紀  根津美術館蔵

コレクション展 中世人の花会と茶会(ちゅうせいびとのはなのえとちゃかい) 
会 期/2012年6月2日(土)-7月16日(月・祝)
会 場/根津美術館(東京メトロ表参道駅から徒歩8分)
開館時間/午前10時〜午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日(7月16日は開館)
入場料/一般1000円
問い合わせ/03-3400-2536
ホームページ
6月8日、29日にギャラリートークを開催



【2】漁村夕照図.jpg
国宝  漁村夕照図  牧谿筆 
中国・南宋時代  13世紀  根津美術館蔵
【展示は6月2日から6月24日まで】

 根津美術館では「中世人の花会と茶会」を開催中です。室町時代から盛んになった「花会(はなのえ)」や「茶会」。そうした会は社交の場という以外に、収集した優れた道具を見せ合う場でもありました。本展は、中世にはどんな器をどんな風に並べ飾っていたのか、に着目して、「茶の湯」の草創期から利休による「侘び茶」の完成までを見ていこうという面白い展覧会です。
 お茶を日本に伝えたのは、平安時代末期から鎌倉時代初めの禅僧栄西(1141〜1215)です。まずは薬として、寺院に伝えられました。また中国からもたらされる花生や喫茶の道具類は寺院に入り、堂内のしつらいや喫茶に用いられました。
 そのため、まずは仏への供花に用いるものとして、古銅などの花生が珍重され、それが道具をしつらえる最初のきっかけとなったのではないかといわれています。やがて、それらの道具は公家や武家へも伝わり、花会や連歌会に用いられるようになりました。
 展示では、観応2(1351)年に制作された絵巻「慕帰絵詞(ぼきえことば」などを参考に、中世の道具類のしつらいに近い展示をすることで、当時の飾り方を見ることができるように工夫されています。

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室町時代には書院座敷に
唐物を飾るための工夫がされた

 花生や茶碗は盆や台に乗せられ、掛け軸がその背後に掛けられています。茶壺は当時使われていたように、口を織物でかぶせて飾り紐で留めています。飾り棚や床の間を再現したところもあり、作品のみの展示とはだいぶ違う印象を味わうことができました。特に、青磁の花生や曜変天目茶碗と堆朱の盆、天目台の取り合わせは重厚で華麗な印象で、のちの侘び茶とは全く異なる美意識が感じられます。
 掛け軸では、「漁村夕照図」牧谿(もっけい)筆 中国・南宋時代 13世紀(国宝)が注目です。この作品はもともとは「瀟湘八景図巻」という巻物で、足利幕府の将軍義満が座敷飾りのために切断し、8つの軸にしたうちの一つ。現存しているのは8幅のうち4幅のみといいます。牧谿は、室町期以降、日本人に最も愛された中国の画僧で、日本に現存する作品は少なくありません。

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重要文化財
「雨漏茶碗」
朝鮮・朝鮮時代16世紀  根津美術館蔵

 後半は、侘び茶の登場へと移ります。侘び茶の祖と言われる村田珠光(1423〜1502)は、中国で高く評価していないものも自身の好みで高く評価しました。それまでの堅牢で華やかな茶器が、次第に朝鮮で作られた高麗茶碗や日本で作られた国焼茶碗のような、素朴な温かさ、静けさに移っていきます。
 こちらも「青井戸茶碗 銘 柴田」(朝鮮時代16世紀 重要文化財)、「雨漏茶碗」(朝鮮時代16世紀 重要文化財)などの名品が並びます。「肩衝茶入 銘 松屋」(中国・南宋時代 13世紀 重要文化財)他、「唐物」茶入4点は、それぞれ漆塗りの盆にのせて展示されています。また、味わいのある表情の「獅子香炉」(瀬戸 室町時代 16世紀 重要文化財)は、千利休が香炉にするために後頭部を割ったという伝えがある逸品です。
 クライマックスは、「赤楽茶碗 銘 無一物」(長次郞作 桃山時代16世紀 重要文化財 兵庫・頴川美術館蔵)です。利休がたどりついた茶のかたちを感じさせる茶碗として、展覧会の最後を飾っています。
「赤楽茶碗 銘 無一物」をのぞき、すべて根津美術館のコレクションですが、国宝1点、重要文化財9点、重要美術品5点といいますから、さすがです。名品を見ながら、茶の湯の歴史を愛で見て体感できる見どころ充分の展覧会です。(編集部小林)