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目の眼オンライン美術展レポート

「応挙の藤花図と近世の屏風」展 
根津美術館



_N301419.jpg重要文化財 藤花図屏風 円山応挙筆 江戸時代 根津美術館蔵

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草花図屏風 伊年印


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赤壁図屏風を並べて展示


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狩野探幽筆の両帝図屏風


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狩野宗信筆桜下麝香猫図屏風


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コレクション展 応挙の藤花図と近世の屏風
会 期/2012年7月28日(土)-8月26日(日)
会 場/根津美術館(東京メトロ表参道駅から徒歩8分)
開館時間/午前10時〜午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日
入場料/一般1000円
問い合わせ/03-3400-2536
ホームページ
8月10日、17日にギャラリートークを開催

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 東京表参道のうだるような街並みから根津美術館のアプローチに足を踏み入れると、とげとげしい暑さも和らぐように感じます。 根津美術館の真夏の展示は、豊富な屏風絵のコレクションの中から円山応挙を初めとする近世の屏風を公開する「応挙の藤花図と近世の屏風」展。円山応挙といえば、幽霊画が有名で、応挙は足のない幽霊を描いた最初の画家ともいわれています。
 円山応挙は享保18年(1733)に生まれ、京都の画壇で頭角を現すと、写生画というジャンルを確立しました。対象のスケッチをもとに描く応挙の画は装飾性が豊かで、『雨月物語』の上田秋成が「絵は応挙の世に出て、写生といふことのはやり出て、京中の絵が皆一手になつた事じや」と書き残しているように、応挙が出たことで、画の世界が写生一色になりました。
 今回の展示は、応挙の代表作の一つである「藤花図屏風」をはじめ、琳派、狩野派の屏風画が並びます。金紙に描かれた「藤花図屏風」は藤の花を6曲1双の屏風に描いた作品で、ゆったりとした空間に、幹が奔放に曲がった藤の花が描かれています。紫色の花の房の立体感が際立っていますが、花びらの下に楕円の白い色をベースに引き、その上に青と紫の薄い絵の具を重ねて塗っているという、なかなかの表現技法が使われています。また、透き通るような葉や幹にもテクニックが使われていて、展示の脇にはパネルで分かりやすくテクニックを紹介しています。
 本邦初公開なのが「草花図屏風 伊年印」。江戸初期に「風神雷神図」で知られる俵屋宗達の工房では、盛んに草花図が作られていたといいます。そのなかの一点で、自立できないほど破損していたものを修復し、公開されました。四季の色々な花が描かれていますが、茎の部分が霞で消えているように描かれているケシの花など、ナイーブな雰囲気が感じられます。
 ほかに、同じ赤壁という題材を描いた応挙門下の長沢芦雪と谷文晁の作品を見比べるのも興味を引きます。
 真夏の東京は相当な暑さですが、館内は涼しく、作品を見ているとひとときの清涼感を感じます。(編集部安藤)