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目の眼オンライン美術展レポート

夏休み企画「美術館で旅行! ー東海道からパリまでー」
山種美術館 



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中央の客引きのユーモラスな所作が見逃せない。
歌川広重(初代)《東海道五拾三次之内 御油・旅人留女》
(後期8/28〜9/23展示)1833-36(天宝4-7)年頃 大判錦絵 山種美術館蔵


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奥村土牛《鳴門》1959(昭和34)年 
紙本・彩色 山種美術館蔵


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夏休み企画「美術館で旅行! ー東海道からパリまでー」
会 期/2012年7月28日(土)-9月23日(日)
会 場/山種美術館(JR恵比寿駅から徒歩約10分)
    東京都渋谷区広尾3-12-36
開館時間/午前10時〜午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日(9月17日は開館し翌日休み)
入場料/一般1000円
問い合わせ/03-5777-8600(ハローダイヤル)
ホームページ
8月5日に講演会「図会の時代の名所絵師、広重」を開催
(詳細はホームページをご覧の上、お申し込み下さい)

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佐伯祐三《レストラン(オ・レヴェイユ・マタン)》
1927(昭和2)年 カンヴァス・油彩 山種美術館蔵


 恵比寿駅から東へ徒歩10分ほど。瀟洒な建物の山種美術館では、夏休み企画として9月23日まで「美術館で旅行! ー東海道からパリまでー」を開いています。 全ての道はローマに通じるではないですが、お江戸日本橋を出ると、美術の世界ではパリに通じているようです。展示されているのは、山種美術館所蔵の歌川広重『東海道五拾三次』全55図(前期後期で展示替え有り)のほか、浮世絵、日本画家の風景や旅をテーマにした作品で、江戸時代の日本からパリやニューヨークへ博物館にいながらにして旅行気分を味わえます。
 展示は3章に分かれ、第一章「広重と歩く東海道と名所」では広重の「東海道五拾三次」の保永堂版が並んでいます。おなじみの図案ではありますが、保永堂版の初期摺りならではのものとして、たとえば「日本橋」では朝焼けの部分に雲が描かれていたり、「蒲原」ではよく知られているものは道の下の部分が暗いのに対して展示作品では空の上部が暗くなっていたりと、初摺りならではの違いをみつけるのも楽しみです。山がデフォルメされた「箱根」や子供を背負った女性が生活感を見せている「丸子」ほか、あらためて見入ると、それぞれの作品の持ち味がよくわかります。

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 第二章は「日本を旅する 〜北海道から沖縄へ〜」。尾瀬(吉田善彦 尾瀬三趣)、日光華厳の滝(横山大観 飛瀑華厳)、箱根(野口小蘋 箱根真景図)、那智(奥村土牛 那智)ほか、日本各地を描写した作品が並びます。実際に旅行した思い出をイメージして作品を見ると、その作品により親しみを感じるようです。
 第三章は日本を飛び出して世界へ。「世界を旅する〜マンハッタンからパリへ〜」には、横山操、速水御舟、佐伯祐三ら、世界の国や街の異文化に触れて感じたままを描いた作品が展示されています。なかでも、わずか30歳で亡くなった佐伯祐三の作品は、静という風景のなかにも躍動を感じることができます。祐三は屋外にキャンバスを立てて一気に描いたといわれ、その時に吹いていた風が巻き込んだパリの塵も一緒に絵の中に封じ込められています。

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 山種美術館といえば、絵画鑑賞のほかに、テーマに合わせたカフェでの和菓子も評判を呼んでいます。今回は「うず潮」や「日本橋」「那智の滝」など、旅をイメージした涼しげなお菓子を楽しめます。また、夏休みということで、小中学生向けの鑑賞ワークシート無料配布、思い出の旅を描くぬり絵・スケッチコーナー、8月中浴衣で来館すると入館料割引きと半生菓子プレゼント、などイベントも盛りだくさん。音声ガイドでも落語家の古今亭菊六さんが江戸の旅人に扮してナレーションを行うなど、ひと味違う展覧会になっています。(編集部安藤)