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目の眼オンライン美術展レポート

琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展
三井記念美術館

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平安〜鎌倉期の仏像は
曲線の優美さを感じさせる

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館内入り口のパネル

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小さいが心のこもった仏像が並ぶ

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国宝「金銅経箱」平安時代
延暦寺蔵

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展示室4は仏像が並び圧巻

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木造の本地仏像が一堂に

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シンプルなのに表情が豊かな
建部大社の女神坐像

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展示室7では両界曼荼羅図を展示


特別展「琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
会 期/9月8日(土)〜11月25日(日)
     ※会期中に一部展示替えあり
会 場/三井記念美術館
東京都中央区日本橋室町2丁目1—1 三井本館7階
開館時間/10時〜17時 ※入館は16時30分まで
休館日/月曜日(但し祝日は開館、翌日休館)
入場料/一般1200円 大学・高校生700円 中学生以下無料
問合わせ/03−5777−8600(ハローダイヤル)
ホームページ



  東京・三井記念美術館では、9月8日(土)から「琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝」展が始まりました。
 滋賀県は全国で4番目に多く国宝・重要文化財の多い県だそうです。比叡山延暦寺や石山寺をはじめ、琵琶湖を囲むように点在する古寺には多くの貴重な仏像や宝物が残されています。本展は、そうした中から国宝・重要文化財が半分以上を占める約100点の宝物が展示される展覧会とあって、見応え充分です。

 三井記念美術館は、昭和初期に建てられた洋風建築である重要文化財・三井本館の中にあり、重厚な内装をそのまま生かしています。時代を感じさせる展示室1の落ち着いた空間には作品を360度見られる単体のガラスケースがゆったりした間隔で置かれています。
 まず最初のガラスケースには、「誕生釈迦仏立像(たんじょうしゃかぶつりゅうぞう)」(重文 奈良時代 善水寺)が天を指さしています。ふっくらとしたおだやかなお顔で、像高23.2㎝と小さなお像ながら、力強さを感じさせます。人を惹きつける魅力があって、トップにふさわしい仏像です。

 同じく展示室1にある「金銀鍍透彫花籠(きんぎんとすかしぼりけこ)」(国宝 平安〜鎌倉時代 神照寺蔵)は、法会のときに仏前に花びらを散華(さんげ)するために花を盛る浅い籠で、銅を鍛金して華やかで繊細な宝相華唐草文が透かし彫りされています。
 神照寺にはこの花籠が全部で16点あり、本展では平安時代のものと鎌倉時代のものがそれぞれ1点ずつ展示してあるそうです。どちらが平安で、どちらが鎌倉がじっくり見てみましょう。お話によると平安時代の方が繊細で花の花弁が細いのだそうです。

 次の展示室2はいつも素晴らしい名品を1点だけ単独に展示していることが多いです。今回も、本展の大きな見どころの一つ、「金銅経箱」(国宝 平安時代 長元4年(1031) 延暦寺)が展示されています。精緻な文様が前面にはいった経箱で、藤原道長の娘・一条天皇の中宮であった彰子が作らせたもの。記録により年代もはっきりしているとても貴重なものだそうです。地中に埋納されていたものが大正年間の工事で発見されたのだそうですが、鍍金鍍銀もとても美しく残っています。

 さて、いよいよ仏像の安置されている展示室ですが、入り口から室内全体を見回すとさずかに壮観です。見上げるほどの大きな仏像はありませんが、1点1点の造形に迫力があります。技術の確かな素晴らしいものや素朴な雰囲気をもつものなど、近江という土地柄を示す多種多様な仏像がみられます。
 皆さん、仏像を拝見するときはまずはお顔を見られると思うのですが、その次に気になるのは手ではないでしょうか。如来や観音は優美に印を結び、不動明王は力強く拳を握っています。葛川明王院の千手観音立像(重要文化財 平安時代)をはじめ、仏像の指先のたおやかで美しい様子を間近でじっくり見ることができました。

 また、かの知る人ぞ知る口元をおさえた女神坐像(重要文化財 平安時代 建部大社)も出品されています。シンプルな作りながら表情が生き生きとして、平安の頃の姫君をも思わせる美しい神像です。
 そのほか、曼荼羅や仏画も多数出展されています。展示室の最後を飾る如意輪観音像(重要文化財 鎌倉時代 法蔵寺)は流麗な線で描かれた均斉のとれた観音さまで思わず見惚れてしまいます。

 美術館の入り口にある特設の写真パネル展「水と神と仏の近江」も見逃せません。素晴らしい近江の四季折々の風景や仏像の写真がたくさん展示されています。以前、月刊「目の眼」(2011年10月号)で近江の神仏を特集した時に、ご協力いただいた寿福滋さんの作品です。琵琶湖を有した美しい自然と仏像の写真で、近江という地の特別な風情を十二分に味わえます。

 ところで、近江を訪ねて、琵琶湖と古寺をめぐる旅ができたら素敵ですが、なかなか全部をめぐるのはむずかしいでしょう。各寺社の仏像・宝物を寄託公開していた琵琶湖文化館も現在は休館中ということもあり、東京に居ながらにしてこれだけの近江の仏像を拝観できるのはめったにない機会。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。(編集部 小林)

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寿福滋撮影「水と神と仏の近江」写真パネル展
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