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目の眼オンライン・レポート

益子 2012土祭 

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藍染工房では川村忠晴氏の
「灯りのインスタレーション」を公開

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土祭広場では土からの恵が奉納されていた

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あちこちのポスターで土祭を盛り上げる

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夏の華 祇園祭の屋台も登場

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町のあちこちに古い写真を貼りだしている

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田の畦に蒲の穂が揺れていた

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ユニークなテントの下でクラフト体験






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町のあちこちに幟がたなびく

 9月22・23日と益子を訪れた。ちょうど、30日まで行われている土祭の最中である。 町役場に車を止めて、メインストリートまで歩いて行く道すがら、田の畦でザリガニ取りをしていた小学生の男の子たちから元気な「コンニチワ」の挨拶を受ける。続いて通り過ぎた中学生の女の子からも、犬を連れて散歩途中のご婦人からも「コンニチワ」と声をかけられた。東京都心ではなかなか得難い、ごくごく基本の挨拶がとても心地よく、たちまちにして、益子っていいところだな、と感化されてしまった。

 益子本通りというメインストリートは、一見どこの町にでもありそうな昭和の面影を残す商店の並ぶ通り。だが、あちこちに真っ白な布に土祭の文字が踊る幟がはためき、軒先には歓迎の意味をこめた土人形が並んでいて、やはりハレの日のたたずまいを感じさせる。風に乗ってカレーライスのいい香りが漂ってきたとたん、腹がぐぅと鳴った。

 土祭はどのような祭りかというのを簡単に説明するのは難しい。簡単に言えば、アートをキーワードにしたイベントだ。公式ガイドブックには、「益子の風土、先人の知恵に感謝し、この町で暮らす幸せと意味をわかちあい、未来につなぐ。」と書いてある。

 かつて陶芸家の濱田庄司は、師と仰ぐ板谷波山の元で益子のやきものと出会い、そののびやかな作風から益子にあこがれ、訪れて窯を築くことを決めたという。濱田が感じた自然の息吹とのどかな風景、明るくのびやかな人柄は、今も健在だ。濱田らが築いてきた陶芸の町としての歴史。豊かな農産地としての土に対する感謝、そして地震や竜巻など自然への畏敬の念が今回のイベントに結実している。一方で、ただのイベントで終わらせないのが、益子のアートをリードするスターネット、馬場さんのアイデアだろう。町のあちこちで繰り広げられている展示やワークショップ、セミナーは、どれも魅力的なものばかり。藍染工房の仕事場で作業している脇に明かりの展示があったりと、生活の中にアートが違和感なく溶け込んでいるのが益子らしい。

 2005年、愛知万博で地球市民村というパビリオンに参加したことがある。地球市民村というのは、子育てや自然、食料などのNPO/NGOが月替わりで自分たちの主張を表現する場所だったが、環境や食料問題、エコロジーなどをいち早く提起していたことで、一定の成果があった。一方で毎日のようにコンサートが行われ、オーガニックな料理が提供されるなど、癒しという面でも先進的だった。土祭を訪れてみて、益子の街全体をアートのスペースととらえ、そして住人が心から楽しんでいる様子は、地球市民村での体験と重なった。自然の力、アートの力、食の魅力、人の魅力など、さまざまな要素が混ざり合った土祭は間もなく大団円を迎える。(編集部安藤)

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益子の幸を盛り込んだ土祭食堂の料理