「室礼三千」室礼教室だより その3「ひなまつり」
3月3日はひなまつりですね。女の子のいる家では、ほとんどのお宅でお祝いをされるのではないでしょうか。
室礼教室では、赤と白の紙でお内裏様、おひな様をつくりました。紙は神に通じるので、本来、紙びなはひな人形よりも格が高いものだそうです。
型紙を一緒につけて頂いて、きれいに切り取りました。下に敷く菱形の赤い紙も長方形の紙を折って作ります。その時も、祝い事の時の約束事として、折り返しが上にくるようにと教えて頂きました。
「折り目が下向きだと、福が下に流れ落ちてしまうということかもしれませんね」と山本先生。
紙を切って人形を作るなんて、本当に久しぶりです。たぶん子供の頃以来でしょう。
教室で先生のお話をきくと、本来ひなまつりは、女の子のためのお祓い、厄除けのおまつりで、また早くに亡くなった女児への供養の意味も込められているのだそうです。飾る花も、春の花ということだけではなくて、桃の花は邪気を祓うため、菜の花は菜種油を取ることから燈明の変わりとしての意味を持っているそうで、すべてに祈りが込められていることがわかります。
教室では、透明のプラスチック立てに紙びなをしつらえ、五色のひなあられを頂いてお皿にもってお供えしました。それから、いり米で見立てたあられと着物地でくるんだはまぐりをお借りして、盛り物を作らせて頂きました。あられはご先祖や神様のための道しるべの意味があるそうです。はまぐりは女子の貞操の象徴、ひなまつりの夕飯でお吸い物にしたりしますね。
あられで作る川にひなを流す室礼を山本先生が即興でして下さいました。昔の人は厄落としのために、人形で体をなでて身代わりになってもらい、川に流したり、火で焚いたりしたそうです。今でも流しひなをする地方がありますね。
小さな紙びなが流れるあられの川のまわりに、さざえやはまぐり、母子草、ふきのとう、かんぞう、百合根(和合果)を盛った室礼は、春の自然をぐっと家に取り込んで、早春のまだ冷たいけれど甘くてさわやかな空気を感じるような、きれいな室礼で、生徒さんからも感嘆の声があがりました。
山本先生は、「必ずこの形で、ということはありません。桃や菜の花、貝、あられ、色々取り入れて、愉快に楽しむのも、神様へのおもてなし、お供えです」とおっしゃっていました。
さて、家で早速、教えて頂いた室礼をしようと思案して、桃の花を飾ることにしました。桃の花は去年の骨董ジャンボリーで買った昔の油壺、女性が髪油を入れて使っていた壺に活けました。ふさわしいかどうかはわかりませんが、女性に関係あるものですね。ひなあられを入れる小皿は、九谷焼窯元のお店で偶然見つけた戦前のもの。金と赤絵で牡丹や桜が描かれていて、普段使うには派手だなとしまい込んでいたのですが、あられを入れたら、おひな様へのお供えに少し華やかでいいかも、と一人喜んでしまいました。
高いお道具やひな人形は買えませんが、紙びなで素敵な室礼ができて嬉しいひなまつりになりそうです。(編集部 小林)
山本三千子先生主宰
室礼三千のホームページ