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「室礼三千」室礼教室だより その6「七夕」


 今月の室礼は七夕です。たなばたと読むことは、もちろん皆さんご承知でしょうが、なぜ「たなばた」と読むのでしょうか。室礼教室では、「たなばた」の意味から教えて頂きました。

 古来日本では、棚機女(たなばたつめ)と呼ばれる機織りをする乙女が、水辺の小屋で身を清めて、神へ供えるための布を織りました。その時に使った機織り機を棚機(たなばた)といい、その布を旧暦の七月七日夕刻に、神棚にお供えしたことから、七夕と書いて、「たなばた」というようになったといわれているのだそうです。
 これは、13日のお盆に祖霊を迎えるための準備で、供え物は川に流して、穢れを祓(はら)ったということで、これが今でも七夕飾りを川に流したりすることに通じています。

 「あれ、織り姫と彦星の伝説は?」と思われる方も多いでしょう。私も七夕といえばまっさきにそれが思い浮かびます。仲むつまじい二人が一緒にいてばかりで仕事を怠ったために、神の怒りにふれて天の川で隔てられてしまい、年に一度七月七日にだけ会えるようになったという牽牛星と織星にまつわる古代中国の伝説です。この伝説の織女星と日本の棚機女が重ねられて、日本でも定着したのだそうです。
 そして、中国では織女星と牽牛星は裁縫、芸事を司る神とされたため、芸事や学問の上達を願う「乞巧奠(きこうでん)」という祭りが行われていたので、日本でもそれにならうようになりました。
  青・赤・黄・白・玄(くろ)の五色の短冊も、中国の陰陽五行からきています。こうした中国の行事や陰陽五行説と日本の古代信仰が結びついて、今の日本の行事になっていったようです。
 「日本の七夕まつりは、水も重要です。竹は水の精と考えられ、笹のサワサワとそよぐ音が神のおとずれを表わすものと考えられていました。水盤に水をはって星を映す星祭りとしても行われていました」というお話もありました。牽牛星と織女星が映ると願いがかなう、という言い伝えがあるそうです。
 七夕まつりは、日本と中国の行事が複雑にからみあっているようです。中国から伝わった行事の中に共通なところや共感できるところがあったからこそ、日本にも根付いたのだと思います。

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 さて、教室で用意して頂いたのは、まずは青(緑)・赤・黄・白・玄(紫)の五色の短冊です。緑の紙は、梶(かじ)の葉の形に切り抜きました。これは、昔は梶を天の川を渡る舟の舵(かじ)にかけて、その葉に願い事を書いたためだそうです。そして、学問向上を祈る筆と芸事上達を願う琴柱(ことじ)。筆は筆先を五色に染めた縁起物の「鹿の巻き筆」を頂きました
 筆架(ひっか)として夏野菜のナスを使います。旧暦七月(今の八月です)は、夏野菜や麦の収穫期でもあり、感謝祭として、そうめんやナス、キュウリの夏野菜をお供えします。頂いたナスは、まだ小さな生りたてのナスを、茎を長く残して切ったもので、室礼三千の方が育てているものだそうです。
 それから裁縫上手になるように、7本の針に赤い糸を通して、先をまとめて結んだもの。赤は恋の字に通じるので、赤い糸は縁結び、とこれにも願いが込められています。

 7本の針に糸を通すのも大変でしたが、短冊に願い事を書くのに一番時間がかかりました。「短冊には必ず文字を書いて下さいね。何も書いていない短冊は意味がありません」とのことで、悩んだ末、語尾が「〜ますように」という願い事を色々書いて、子供っぽい出来映えに。こういう時には、字が上手くなりたいと本当に思います。「早朝に葉にたまった朝露を集めて、その水で墨を摺って文字を書くと字が上手くなるといわれています。朝露は天からの水と考えられていたからです」と山本先生。

 ちなみに、東京でも朝露はできるのかな、と思っていたら、昨日お会いした方が、「東京でも以前は朝露ができていましたよ。昼は暑くても、夜は涼しくなりましたから」とおっしゃっていました。朝晩の気温差で朝露ができるんですね。最近の東京は夜でも暑いので、朝露は見られなくなっているようです。その原因は、夜通しついている電飾や、エアコンの室外機が出す熱風、熱がこもったアスファルト、風をさえぎる高いビルなどなど、でしょうか。それとも気候自体が変わってきているのかもしれません。


 帰りに大きな本物の梶の葉を一枚ずつ頂きました。室礼三千の群馬にお住いの方が持ってきてくださったのだそうです。緑あざやかで、形もとてもきれいです。自宅に帰ってから、この葉のうえに短冊を盛りました。星を映すための水盤もしつらえました。窓際のカーテン越しで、しかも東京では星もよくみえませんから、映りそうもありませんが、気持ちが大事だと思います。
 教室では、窓辺に紙を切って作った「すくい網」の七夕飾りがつるされていました。山本先生は「願いは自分ですくいよせないといけない、ということで、すくい網を供えるんですよ」とおっしゃっていました。
 神様にお願いするだけでは、やっぱりだめのようです。そして皆さんすでにご存知と思いますが、仙台七夕まつりは鎮魂と復興の祈りをこめて、今年も開催されるそうです。本当に人間のたゆまぬ努力と強さに感銘を受けずにはいられません。私も色々書いた願い事の一つでも、自分でがんばらないといけないなと思います。(編集部 小林)
仙台七夕まつり公式サイト http://www.sendaitanabata.com/

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山本三千子先生主宰
menusub_r1_c1.gif室礼三千のホームページ

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