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「室礼三千」室礼教室だより その8「重陽の節供」

 残暑お見舞い申し上げます。お盆も過ぎ、また通常の毎日が戻ってきました。今年は特に、お盆休みに帰省された方が多かったそうです。テレビでインタビューを受けた方は「東日本大震災で家族の絆の大事さを改めて感じて、一緒に過ごそうと帰省しました」と話していました。

 私は、以前は、室礼をすると、年中行事に合わせて生活のリズムや季節感が体感できそうでいいなと思っていましたが、教室に通ってみて、室礼は、ご先祖様の供養や家族の無事を祈るためのもので、そういう気持ちを再確認する場を作ることが大切な意味なのだとわかってきました。


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 さて、今回の教室は「重陽(ちょうよう)の節供」です。五節供の一つで、9月9日に行われます。別名、菊の節供とも言われます。菊の露が滴った谷川の水を飲んだ侍童が不老の仙人となったという中国の故事から、菊が長寿の花とされ、菊の花びらをお酒に浮かべて飲んだり、菊の露を綿で含ませて、それで身体を拭いて、邪気をはらい、長寿を祈ったものだそうです。
 教室では、菊を丸くしつらいました。フラワーアレンジメントのようですが、「本来は人も花も同格と考えて、一茎一花が一番なのですが、今回は小菊を使って丸く活けてみて下さい。丸い形はおめでたい心の形です。薬玉(くすだま)も同義の形です。そして邪気をはらう意味があります」と山本先生。きちんと祈りの意味が込められています。
 菊は白と赤と黄を用意して頂いて、銘々、丸型のオアシスに菊を盛っていきました。「黄色の輪立てが一番格が高いのですが、お祝いに差し上げるには紅白の菊というのもいいですね」。
 長寿を願って、祖父母や年長の方に差し上げるのだそうです。私は、丸く華やかに仕上がった菊の室礼をみて、「パーティのテーブルにも合いそう」なんて思ったりして、またまた家族の無事を祈るという室礼の意味というのをうっかり失念してしまっていました。
 菊の周囲に菊花の和菓子を盛りました。「菊尽くし」といって、おめでたいものなので様々の菊をしつらいます。盃にはお酒に菊の花びら3枚。これは、3、5、7、9などおめでたい奇数の枚数を浮かべるそうです。五色の紐は、私は菊が三色で華やかだからと白を選びましたが、「白は陰陽五行で秋を意味するのでいいですね」と手直しして頂いたときに山本先生から言って頂き、色にも意味があることを思い出しました。まだまだ陰陽五行や東西南北の意味が頭に入っていません。ですが、五色それぞれ「仁・礼・信・義・智」の意味があるので、どれを入れてもいいそうです。生徒の皆さんも、銘々の五色の紐の中から一色を選ばれて、素敵にしつらわれていました。丸い菊玉の下の台は、榊(さかき)立てです。「重陽の節供は神事ですから、この道具でよろしいでしょう」と山本先生。

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 さて、家に帰って、「菊尽くし」の室礼をしたいな、と思案しましたが、菊の意匠のものはあまり持っていません。ようやく、一枚大判の菊模様のハンカチをしまってあるのを思い出しました。
 その上に教室で作った菊玉を盛ってみましたが、あまり合いません。もちろん、菊玉が本当にきれいなので、黒い板(実はトレイです)に菊と盃だけでもいいのでしょうが、他にもしてみたいなと欲がでました。
 何日かして、近所のお花屋さんをのぞくと、きれいな白い菊がありました。本来ならば、黄菊の方がベストと教えて頂きましたが、菊のハンカチに合いそうと思い、買ってきました。骨董市で買った青い切子のグラスに菊の花びら3枚を浮かべて、残暑のまだ続くなか、ちょっと涼しげな感じでもいいかも?としつらえてみました。本来は9月9日が重陽の節供ですが、9月19日の敬老の日は三連休。家族集まって、長寿祈願やお祝いで、菊を見ながら冷酒を飲むのもいいですね(未成年はもちろんジュースで)。(編集部 小林)

山本三千子先生主宰
menusub_r1_c1.gif室礼三千のホームページ

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