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「室礼三千」室礼教室だより その9「お月見」

 今月の室礼教室はお月見です。お月見には、旧暦8月15日の十五夜と旧暦9月13日の十三夜があり、昔は両方お供えをしたそうです。どちらか片方だけだと、「片月見」といって縁起が悪いとされたとか。
 今年は9月12日が旧暦8月15日で十五夜、丸い月がとてもきれいに見えました。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。私は会社からの帰り道に「きれいな満月だなあ」とようやく気が付いて、愛でることはできましたが、全くお供えをしないで終わってしまいました。せっかく室礼教室で教えていただいているのに、失敗です。十三夜は旧暦9月13日、今年は10月9日にあたります。十三夜の月は、満月ではないのですが、古来より名月としてお供えをしてきました。

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 十五夜は芋名月、十三夜は栗名月、豆名月とも呼ばれます。芋名月の芋は里芋のことだそうです。芋は一つの株にたくさんなるので、子孫繁栄を祈ってお供えされたとか。他に収穫した季節のものもお供えします。お月見といえばススキというイメージですが、ススキは稲に似ているので、代わりとしてお供えされたようです。お月見のお供えも秋の収穫を感謝する意味がこめられているそうです。それでは、なぜ太陽ではなくて、月にお供えするのでしょうか?「太陽は陽で火、月は陰で水を意味するとされました。昔の人は陰と陽があって生かされていると考えました。『御陰様で』という言い方なども、ここからきているのではないでしょうか」と山本先生。
 現在の私たちは、太陽と月が宇宙にある天体だと知っていますが、まだまだわからないことがたくさんあります。最近ではダークエネルギーと呼ばれる謎のエネルギーが宇宙にあることがわかったそうです。古えの人は今のような科学技術による解明はできなくとも、昼には太陽がめぐり、夜には月が満ち欠けしていくのを見て、異なる二つの世界と未知の力を感じていたのだと思います。

 日本の行事や習慣は、古代信仰と仏教、陰陽五行、農耕儀礼、宮廷文化、わびさびの文化などがどれも否定されずに入っているような気がします。その分複雑で、山本先生も「お月見の室礼を20年以上していますが、まだまだ新しく気付かされることばかりです」とおっしゃっていました。だからこそ、面白いとも言えると思います。

 さて、十五夜の室礼ですが、教室では十五個のお団子と、里芋、さつまいも、有りの実=梨(梨は「無し」に通じて縁起が悪いので「有り」に言い換えるのだそうです)をお供えしました。「神様が作った自然のものが上座ですから、お芋と梨を左側にして下さい」と山本先生。他にもお団子の積み方や、三宝(さんぽう)の向き、など色々な約束事があります。私は、一度聞いただけでは覚えられなくて、ノートに書き留めてそれを見ながら室礼しました。

 お団子は十五個の場合は、下の段から9個-4個-2個に積みます。十三夜は9個-4個です。驚いたのは、準備して頂いたお団子の形と大きさです。お月見団子というと、ピンポン玉のようなまんまるの団子だと思っていましたが、教室で頂いた団子はおまんじゅうのような形の大きなお団子です。「十五夜の団子は15日なので、一寸五分の団子ともいいます。形もまんまるの枕団子は、亡くなった方が人生を全うしたという意味で作るもので、お月見ではまんまるにしません」と伺って、色々なことが本当に忘れられつつあるんだなと実感しました。

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 私はたまたま木賊(とくさ)が供えられた横で室礼をさせて頂きました。木賊は、研草、また兎久佐とも書き、月に棲む兎にちなんで、供えるそうです。団子の盛り物がピタッと合いました。

 室礼のあとは、お団子に蜜をかけておいしく頂きました。直会(なおらい)のことは以前にも書いたかと思いますが、神に供えた後に人が頂く「神人供食」のことです。今回はお団子ということもあって、会社に戻ってすぐに社員に「供食」して頂きました。自宅では、梨は早速そのまま頂き、さつまいもは天ぷらにしました。里芋は5個では少ないので、買い足して山形名物の芋煮にしようと思っています。山形ではこの季節、河原で毎日のように芋煮会が開かれます。秋は、収穫を祝い、楽しむ行事が各地で開かれる良い季節です。今年は震災や放射能、台風と大変な年でしたが、無事お米や野菜が収穫されたことに心から感謝をして、来年につながっていくことを祈りたいと思います。
(編集部 小林后子)

山本三千子先生主宰
menusub_r1_c1.gif室礼三千のホームページ

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