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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)




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器高8.1cm






(17)独活(ウド)


 茶花を習っている在京の娘がきいてきた。「今日の花材はヘクソカズラだったよ。一体、これ何語?」。レッキとした日本語である。屁屎葛と書く。あの可愛い花にひどい名前をつけたものだ。早乙女花(サオトメバナ)、灸花(ヤイトバナ)といういい名もあるのに。人、みなスカトロジストだな。
 名前というのは厄介ものだ。田村草という花がある。春の薊(アザミ)に似た花を秋につける。だから、ついうっかり、秋の田村草と呼ぶと、識者に叱られる。秋の田村草という別の花が存在するのである。こちらは山薄荷(ヤマハッカ)に似ているが、淡く渋い色合いが茶花にもってこいなのだ。
 これとよく似た例が、独活(ウド)である。山で時に出遭うのだが、背丈が2mを超え、6月頃白花をつける草のことを、人々は独活という。花を採ってもデカすぎて使いものにならない。まさに独活の大木である。ぼくたちは、これをシシウドと呼んでいる。
 今ひとつ、右下の写真の白花をつける独活がある。丈はシシウドの半分ほど。10月に花をつける。こちらは花以外にも使い道がある。芽生えの頃、土中の茎を掘り出すと、香り高くおいしい春の山菜となるのだ。大は小を兼ねない。ぼくのような小柄の方が味がいいんだぞ。どうして土中の茎を掘り当てるのか、由布院の山菜とりの名人にきいた。前年の枯れた茎から地中を読むのだそうである。
tanaka13-10-2.jpg この独活は10月、由布岳の隣の雨乞岳で採った。花は、霜に痛められて、半分褐色に変わっている。あたりで見つけた草紅葉と竜胆(リンドウ)と併せて活けてみた。
 花器は李朝、竹の面取りである。スパッと面が取ってあるところが大好きだ。いつの日にか、この器中心に李朝工芸を語りたいものだ。(福岡市在住)