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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)




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ブルーベリーの白い花
器:高麗青磁 径:12.2cm



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ブルーベリーの稔り状況。
白いのに少し紅がさしたのは、青二才が少々色気づき始めたところ。
深紅は熟女。紺色は完熟したところ。ぼくみたい。





(27)ブルーベリー


 ぼくも満90歳になると、さすがに足腰が弱ってきた。今も時折里山に出かけるが、歩くのは舗装林道だけ。花があるからと、無闇に薮や草むらに踏み込むと、転倒など危険が大きい。そんな次第で、今月の花は吾が庭の花で御勘弁いただきたい。
 ブルーベリーといえば、ジャムを召し上がっている方も、花はご存じあるまい。案外魅力的で、花材になるほど美しいのでご紹介する。
 実は、ぼくはパンが好きだ。米のご飯は一ヶ月くらい食べなくても大丈夫である。それだけに、パンとバター・ジャムにはうるさいのだ。幸い、カミサンがジャム作りに熱中してくれたので助かった。
 まだ若い頃のことだが、近所の果物屋と約束した。「輸送中キズがついて売り物にならない果物は半額にしてください。うちが何でも一切買い上げる」、ということにしたのだ。これで、ジャムの材料には事欠かない。
 おかげ様で、さまざまな果物のジャムが味わえた。味わえなかったのは、ブルーベリーとスイカくらいである。
 その当時、ブルーベリーは輸入品で、ひどく高価だった。福岡には扱う店がない。仕方ない。カミサンは鉢植えのブルーベリーの木を取り寄せたが、とてもとても、ジャムにするほど実はつかなかった。せめて皆さまに花や実でも、写真でご覧いただきたい次第である。

田中2015-04-03.jpg 今回、花の器には高麗青磁の茶碗を使った。小ぶりなので旅の友である。春日大社の森に続く御蓋山(三笠山)から昇る月を眺めながら、この茶碗で一服点てるのは至福の一刻であった。この眺望に恵まれた宿も、今はない。90歳に達して省みると、すべては一場の春夢である。むなしいなあ。(福岡市在住)