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皆さま この器ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)


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器:十王台式彌生土器 花:辛夷



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(21)十王台式彌生土器


 この器、十王台式彌生土器である。茨城県の常陸地方から出土する。時代は弥生後期ということである。九州では見ることがない土器だ。それが福岡の骨董屋に出たから、すぐ手に入れた。
 常陸地方といえば、出向くのがおっくうである。ぼくの経験だから古い話だが、上野駅での常磐線の乗り場からして、よろしくない。散々歩かされたうえ、まるでド田舎行き専用ホームみたいなところから発車した。うんざりだ。
 でも、九十九里浜の隣が百里だという。添線から外れるが、参考のために行ってみた。何とも豊かな自然が展開しているではないか。林道を歩くと、浦島草などが元気一杯花をつけている。山野草の宝庫である。百里は、いま茨城空港が出来ているから、東京から高速バス便があるときく。
 常陸といえば、県中央部以北の広い地域だ。日立市に十王町というところがある。ここの遺跡がこの土器の初出土地かもしれない。那珂川と久慈川流域を中心に沢山出土しているようである。

2015-03-03.jpg この器、すらりとした手頃なサイズだから、花を活けるのにとてもいい。いつも手元に置いて活用している。頸部に手荒い櫛目文があるので、縄文後期じゃないか、と尋ねる人もあるほどに、面白い彌生土器である。
 花は辛夷(こぶし)にした。辛夷は木蓮の仲間だそうだ。まだ花のない2月から3月にかけて咲いてくれる。ただこの花、咲くとあられもない姿で見られたものじゃない。なに、人間も一緒だよ。あんな可愛いかった坊やが、こんなにくたらしい野郎になるなんて。えっ! ぼくのことじゃないよ。(福岡市在住)