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皆さま この花ご存じですか

田中 孝(摘み・活け・撮り・語る)

konohana03-1.jpg花:思い草 器:新羅(高さ約13.5cm)








(5)思い草(別名 南蛮煙管なんばんぎせる


「道野辺の尾花が下の思い草」。ロマンがあるじゃないの。薄(ススキ)の穂が銀色にきらめく秋の暮、もの思いに沈む少女の姿が心に浮かぶ。その思い草を、現代人は南蛮煙管と呼ぶ。なるほど、織部の煙管に似ている。が、色も香もありはしない俗名にすぎない。
 この思い草、葉緑素を欠く寄生植物だ。銀竜草と似ている。宿主は薄である。薄なら幾らでも生えているが、思い草には滅多に出遭えない。その昔、太宰府天満宮の裏へ抜ける山路、現在の九州国立博物館の近くに、大量に自生しているのを見つけたときは驚喜した。翌年再会に訪れると絶滅しているのだ。どうやら一度、薄を刈った形跡がある。こういう環境の変化に、寄生植物は弱いようである。
 この花、知り合いの茶花好きは植木鉢で育てている。もちろん、薄と同居である。好きこそものの上手なれ、の典型だ。写真の花はその方から頒けていただいた。ちょっと、ドライフラワーじみて面妖である。そういえば、カミサンは以前フローラという女性の会のメンバーだった。フローラとはドライフラワーの別称だな、と言ったらどやされた。御免、思い草の会なんだ。
konohana03-2.jpg 器は、新羅。戦後間もなく買ったから、戦前の持ち込み品に違いない。バカ高くて安月給の青二才には過分の買い物だったのを思い出す。いま見れば、まったくの駄器だが、愛着は深い。その点、カミサンと同様である。
(福岡市在住)